山崎拓・自民党元副総裁にきく―沖縄をとりまく状況をどう見るか

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新基地強行と地位協定の改定

 

-「国防族のドン」と言われた山崎先生でも目測がきかないというのは、本当に深刻なことですね。 

山崎 もし、政府がこのまま辺野古での工事を強行するのなら、少なくとも日米地位協定の大幅な改定をしなくてはいかんですよ。まあ、それもアメリカ側は反対していますから、特に日本の外務省などは及び腰ですね。外交交渉というのは難しいですからね。

本来は、県民の声、国民の声を背景に対米交渉に臨むことで、強力な外交ができるのです。北方領土問題にしても、新聞も含めて日本国内が2島返還か、4島返還か、あるいはどうでもいいという具合に分かれてしまっている。

これは致命的ですよ。世論をバックにしないと迫力ある外交はできない。それで安倍首相はロシアに対して、著しく迫力を欠く外交をせざるを得なくなっている。

それと、日本の政治家にアメリカと交渉する器量がない。まして外務省は向米一辺倒ですからね。

 

-山崎先生ご自身も沖縄とは深い関わりをお持ちですね。 

山崎 冒頭でお話しした高校時代の同級生が沖縄に私の後援会を作ってくれました。YKKとして盟友関係だった小泉首相の時代には、首相補佐官として「1ミリも埋め立ててはダメだ」という小泉首相の意向を受けて、対米交渉もしながら埋め立て面積をできるだけ小さくしようと動きましたが。

ともあれ、沖縄をとりまく情勢をこのままにしておくわけにはいきません。沖縄に寄り添う立場で、今後のことに臨むつもりです。                       

 

【インタビューを終えて】

筆者(宮城)は、『中央公論』2月号の特集「日本史の大論争」で、「動乱期に求められる総理の器」と題して山崎氏にお話をうかがった。その中で山崎氏が最も熱を込めて語ったのが沖縄についてで、別途、沖縄に絞ってインタビューをお願いしたのが今回の記事である。

「国防族のドン」と言われ、外交安保に精通した山崎氏ですら、この先について「目測がきかない」という局面だが、何よりも「沖縄をとりまく情勢をこのままにしておくわけにはいきません」という危機感が、山崎氏を突き動かしているように見えた。

そのような気概と使命感は、本来、現役議員の政治家が持ってしかるべきものだろう。日本は21世紀中葉に向けて、前途を切り開くに足るだけの「政治」を持つことができるのか。普天間・辺野古問題はその試金石であるとの思いを深くした。(宮城大蔵)

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