<名護市辺野古の新基地建設をめぐり、沖縄防衛局は8月6日、埋め立て予定海域で見つかった「オキナワハマサンゴ」の9群体を採捕し、埋め立て区域外に移植した、と発表した。移植にお墨付きを与えたのは、辺野古新基地建設に際して防衛省が設置した「環境監視等委員会」。東京経済大学の大久保奈弥准教授(生物学)が、同委員会の判断に疑義を呈する>
7月13日、沖縄県水産課がサンゴの専門家(匿名)の助言を得て、海域に生息する絶滅危惧種のオキナワハマサンゴを採捕する許可を防衛省に出した。そして、知事が撤回の方針を表明した日、防衛省は当該サンゴを移植し、残された護岸工事に着手した。埋め立ての免罪符としての移植である。
沖縄の観光業を支えるサンゴ礁生態系の減少は温暖化だけが原因ではなく、埋め立てによる人為的破壊が大きい。しかもこれまでのサンゴ礁再生事業の結果をみれば、サンゴの移植や幼生着床具で元のサンゴ礁生態系を再生することが難しいと分かる。最新の報告では、移植後の3年後の生残率は30%以下、場所によっては10%以下である。それにもかかわらず、防衛省が「移植」を辺野古大浦湾の埋め立て開発の「環境保全措置」にできたのは、死亡率やコスト高といった負の側面よりも、「植え付け(移植)でサンゴ礁生態系を再生させる」といった宣伝文句が一般市民に強調されてきた結果とも言える。
この点で、サンゴの移植をCSR活動にする複数の大企業、それを業績につなげる研究者、環境省や県に対して、今後の広報の慎重さを求めたい。水産学的には重要なサンゴの養殖・移植技術だが、それを安易に企業や大学のイメージアップや保全活動に利用することで、逆の効果をもたらしている現状がある。
そして今、防衛省は免罪符としてのサンゴ移植の約束さえも反故にした。工事実施前には埋め立て予定海域のサンゴを移植する、白化や死亡の恐れがある高水温期を避けて移植するとしたのに、既に工事を行い、暑い夏の最中にサンゴを移植した。
この暴挙に対して、普段は保全を声高に叫ぶ環境監視等委員会の科学者らはどう対応したのか。彼らが移植や白化に関する過去の文献を読まず、ましてや委員会の議事録にある通り、絶滅危惧種のサンゴを「案外夏場でも移植可能ではないか」とまで根拠なく発言したとすれば、委員らが科学者としての務めを放棄したと見られても仕方あるまい。
環境監視等委員会は辺野古大浦湾の海洋環境とサンゴやその他の生き物たちを守る責務を負っている。そのことを自覚し、防衛省に対して毅然とした提言を行わなければならない。委員会の科学者らは、知事の撤回理由の一つである「環境対策に関する事前協議が不十分である」という事実を重く受け止めるべきだ。
【本稿は2018年8月3日付『琉球新報』への寄稿記事を転載しました】
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