戦後80年、冷戦後からポスト冷戦後へ(上)

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戦後80年と冷戦後の終わり

今年、2025年は戦後80年。おぼろげではあれ、終戦時の記憶がある人々は80代以上ということになる。10年先の次の区切りが戦後90年ということを考えると、戦後80年は戦争の記憶を同時代のこととして受け止め、考えることのできる大きな節目なのかもしれない。

 一方で国際情勢に目を向けると、今月にはアメリカでトランプ氏が大統領に再登板となる。その点も含め、世界は冷戦後からポスト冷戦後、すなわち冷戦後の次の時代に入りつつあるのではないかという気がしてならない。そのことは日本、そして沖縄にとってどのような意味を持つのだろうか。

まずは冷戦後とはどのような時代だったのかを振り返っておきたい。冷戦後の30年余りを左右した最も大きな要素はアメリカの動向だろう。1989年の米ソ冷戦終結後には力の面でも政治経済モデルや価値観の点においてもアメリカの影響力が世界を覆い、アメリカはもはや単なる国家ではなく、現代版の帝国なのだという議論もあらわれた。

 しかし、アメリカの力と道義的な威信は2001年の同時多発テロに始まる「テロとの戦い」で大きく揺らいだ。特にイラク戦争では国連安保理の分裂を招き、占領統治も混迷した。アメリカは対外関与に疲弊し、国内では自由貿易が中間層の没落を招くなどアメリカにとって不利だという言説が強まる中、トランプ大統領はアメリカにとっての損得をあからさまに語ってみせた。国際秩序の維持よりも自国にとっての利害で行動する。そのような傾向はトランプ再登板でより強まると見る向きは多い。

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