米中G2論から多極化へ
一方、この30年余りで著しい経済成長を遂げた中国は、冷戦後におけるグローバル化の恩恵を最も受けた国だろう。冷戦後の後半期には米中G2論や米中対立が注目を浴びるなど、アメリカに次ぐ準主役級に躍り出た。一時は、今世紀半ばに経済規模でアメリカを抜くという予測も相次ぎ、習近平国家主席は「中華民族の偉大な復興」や「中国の夢」を語った。
しかし、このところ経済は失速気味で、より根本的な問題として、ポスト習近平の行方や共産党支配の安定・維持を最優先する統治の下で活力あるイノベーションは可能なのかという長期的な課題、そして急速な少子高齢化という関門もある。
中国に近接する日本では中国台頭の圧力がひときわ強く感じられるが、もう少し視野を広げてみるとインドの人口は中国を抜き、東南アジアでもインドネシアの経済規模は今世紀半ばに日本を抜くと予測される。他にも存在感を強めつつある欧米以外の有力国は多い。
米中の存在感がともに頭打ちになる中、これからの国際秩序はより多元的な方向に向かうのだろう。そのありようがいかなるものになるのか。国際的なリーダーシップが溶解したまま混沌と混迷の中を漂うのか、あるいは一定の秩序と調和が徐々に形成されるのか。いずれにせよ、ポスト冷戦後という次の時代が到来しつつあるように思われる。