辺野古新基地問題は「終わった」のか

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代執行から土砂の投入へ

政府は辺野古新基地をめぐって先月から大浦湾沖への土砂の投入を始めた。昨年末の代執行に際しては全国紙でも「沖縄県との対話を深めず、初めて代執行という最終手段に頼る事態に至ったのは国と地方の関係における汚点であり、政府は反省してもらいたい」(『日本経済新聞』社説、12月28日)といった厳しい指摘が相次いだ。

 たとえ、いまの時点では全国的にも大きく報道され、強引な手法に批判が相次いだとしても、工事を粛々と進めていけば、やがて関心も批判も沈静化していく、少なくとも全国レベルでは。それが政府当局者の算段なのだろう。

沖縄県が国への対抗手段を失ったことで、「この問題は(政治的には)終わった」と口にする政府関係者もいるという。翁長雄志知事以来、県と国が鋭く対立してきたこの問題に関わってきた政府関係者からすれば、最後の難関を突破したという思いもあるかもしれない。

しかし現実には軟弱地盤をはじめとする難工事が待ち構えており、また、仮に辺野古新基地が政府の見込み通りに完成したとして、それが普天間基地の速やかな返還につながるのかどうか。また、それまで10数年にわたって「世界一危険な」普天間基地の現状は放置したままなのだろうか。「この問題は終わった」というのは沖縄県との対立にばかり目が行き、県の抵抗をどう押し切るかに気を取られた、まことに近視眼的な発想というほかない。

 1996年の日米両政府による普天間返還合意からすでに27年が経つ。戦後のアメリカによる沖縄統治も27年間。それだけの年月を費やしてなお本格的な工事が着手されただけというのは、やはりこれだけ基地が密集した島に、新たに大規模な基地を建設するという計画が沖縄にとって受け入れがたいものであることを示している。

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