「沖縄=広島=長崎イニシアチブ」で外交の多層性を

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広島、長崎が持つ「特別さ」

 毎年、8月は戦争の過去を振り返り、平和を考える空気が強まる。8月15日の終戦記念日を前にした8月6日、9日の広島、長崎の原爆の日は日本全体にとっても重要な日であることは言うまでもない。

今年の原爆の日では、5月に広島で開催されたG7サミットが核抑止力の重要性を打ち出したことの是非が改めて問われ、広島から核兵器を肯定するメッセージが発せられたことへの批判も相次いだ。「被爆者が存命のうちに核なき世界の実現を」というフレーズは、政治な立場の違いを超えて日本全体に響き渡り、戦後日本が「唯一の被爆国」として、平和を希求すること=「平和国家」の一つの拠り所となってきた。核抑止力肯定論への反発は、「平和国家」という日本のアイデンティティがなお強固であることを示して強く印象に残った。被爆地として広島、長崎が持つメッセージ性、訴求力には際立ったものがある。

長崎を訪れた玉城デニー知事

 その原爆の日に先立つ先月19日、長崎を訪れたのが沖縄県の玉城デニー知事である。平和祈念像で献花し、原爆資料館を見学した玉城知事は「いかに愚かな行為が多くの人々の命を奪い去り、残った方々に苦痛を与え続けるのか。沖縄と長崎、広島は同じような痛みを受けたからこそ、平和への声を発していく責任があると痛感した」と述べた。

米軍基地を考えるトークキャラバンでの長崎訪問にあわせてのことだったが、玉城氏は「長崎、広島の当事者意識の高さ、強さに強い印象を受けた。沖縄、長崎、広島は平和国家日本の基盤だと思った」とも語る。

「慰霊の日」でメッセージと連帯の呼びかけ

玉城知事の長崎平和祈念像や原爆資料館の訪問は初めてだというが、戦争と平和をめぐる広島、長崎との連携、連帯はそれ以前から存在している。戦後75年の節目にあたる2020年の沖縄・慰霊の日に際して、沖縄県は全戦没者追悼式に広島、長崎の両市長を招くことを予定した。

新型コロナウィルスの感染拡大でビデオメッセージでの参加となったが、メッセージで松井一実広島市長は「世界恒久平和の実現」に向けた連帯を呼びかけ、田上富久長崎市長は「沖縄と被爆地は、ともに励まし合い、ともに学びながら戦争の記憶を伝え続け、平和の文化を社会に根づかせていきましょう」と訴えた(『朝日新聞』2020年6月24日)。

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