法案化に向けて
辺野古の海では埋め立てが今日も続けられており、「辺野古が(普天間基地移設の)唯一の選択肢」と日本政府は頑として譲らない。しかし、現在米議会で審議中の国防権限法案は、辺野古基地建設に直接触れていないとはいえ、その基礎となる米軍再編の「再検証(review)」を求めている。この条文はまだ法律になってはいないが、上院では可決されており、上院がこのような意思を示したということ自体、既に多くの意味をもつ。
振り返れば、米軍再編の日米ロードマップは2006年に合意された。その「見直し」は6年後の2012年に行われ、沖縄からグアムに移転する海兵隊の部隊が大幅に入れ替えられる大規模な変更となった。それからさらに7年が経過している。中国・北朝鮮の情勢を見据えて米軍を各地に分散配備するという米軍全体の傾向もこの数年顕著である。揺れ動くこの地域において、今後、米軍再編のさらなる変更の声が米側からあがる可能性もある。
もっとも、まずは、この条文が両院協議会で残り、最終的な法律として成立しなければ、国防長官による再検証も行われず、米軍再編の見直し提言もなされない。
8月中旬の屋良朝博衆院議員との訪米では、当初、この条項案を上院が可決したとの情報しかなかった。多くの議員事務所との面談を繰り返しながら、同条項が織り込まれた背景、上院での議論、下院案がこれを含まない理由、この法案を審議する上下院軍事委員会の各議員の支持・不支持、9月からの両院協議会の構成メンバーなどといった事項について一つ一つ丁寧に、しかし急ピッチで聞き取りを続けた。と同時に、辺野古基地建設に強く反対する沖縄の声を県民投票の結果等を示して伝え続け、米軍再編の見直しが必要であること、そのためにはこの条文が最終的な法律に含まれねばならないことを繰り返し訴えた。
今後、下院も同意することが重要であるため、下院の軍事委員会所属議員への訴えにも注力し、また、それらの議員へのアプローチが可能な他の議員へ協力要請を続けた。
フットワークの軽い屋良議員の1週間の滞在と積極的な働きかけのおかげで十分な状況把握と今後の方向付けが可能となった。時に面談は1時間半以上にも及び、米議会における今後の具体的な動き方について議会内の関係者と議論するという、大変貴重な面談を繰り返し行うことができた。この条文案の最終法案化については、下院でも党派を超え何人もの議会関係者が共感を示し、協力を約束してくれ、帰国後の現在も連絡を取り合っている。
9月第2週から両院協議会が始まる。年末に渡ることもある国防権限法の審議であるが、今年は何ヶ月とかけずに仕上げる、という声も数多く聞かれた。上院の意思を米議会の意思とするために、まずは、上下院の軍事委員会の委員長・筆頭理事(共和・民主のトップ)への働き掛け、続いて、両院協議会および両院の軍事委員会に所属する議員への働き掛けが急務である。
【本稿は2019年8月25~27日付『沖縄タイムス』掲載原稿を転載しました】