具志堅隆松さんと迎える6・23 (6) 慰霊の日の主役は誰か

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今年の慰霊の日には、コロナ禍以後例年通りの規模で開催される初めての追悼式が開催された。ただ、岸田首相・細田衆議院議長・尾辻参議院議長の他、加藤厚生労働大臣・浜田防衛大臣・岡田沖縄担当大臣・山田外務副大臣といった政府要人が揃って来沖することで警備が大幅に強化された結果、従来の慰霊の日に戻ったとは到底言えないものになった。平和の礎周辺にはご遺族より多いと思えるほどの人数の警察官が配置され、ご遺族への職質まで行われたことは前稿にも書いた。首相襲撃事件が立て続けに起こったため、式典会場周辺の警備の強化は仕方なかったかもしれないが、平和の礎周辺にまであれほどの警備体制を敷くことが合理的であったかは疑問が残る。ご遺族の職質など、萎縮効果を狙ったものではないかと疑わざるを得なかった。

具志堅隆松さんたちの運動も警備のために相当制限された(異常な警備で運動が制限されたことは、ポリタスTVが昨年と今年の平和祈念公園の様子を比較しているのでよくわかる)。一番大きかったのは例年ハンガーストライキを行うテントの設置許可が下りなかったこと(当初は6月22日~23日にハンストを行う計画で、私も具志堅さんと一緒に平和祈念公園でテント泊するはずだった)で、具志堅さんはテントが張れなかったことを重ね重ね悔しがっていた。テントを拠点にご遺族と対話したり、ビラを配ったり、遺骨土砂問題に関するシール投票を行ったり、カンパを募ったりといった大切なことを全て諦めざるを得なくなったからだ。結局具志堅さん主催で出来た行動は、未開発緑地帯の報道陣向けフィールドワークと、慰霊の日の午前10時・午後2時に2回行った「守ろう!戦没者の尊厳+沖縄県民の命」という集会などに限られた。

私たちが平和祈念公園などで出会った沖縄の方々も口を揃えて警備の過剰さを指摘していたし、具志堅さんも「今日(慰霊の日)の感想は警備が過剰だったこと。慰霊祭にふさわしくない。(慰霊祭は)首相のためにやっているのではない」と批判された。車の制限も厳しく、シャトルバスの運行などの配慮はされたものの、具志堅さんは「高齢のご遺族が公園まで車で来られるような配慮が必要だったのではないか」と懸念を漏らした。琉球新報は追悼式での警備を訝しむ遺族会の女性の声を紹介する記事を出し、SNSでも警備に批判的なコメントが多数流れた。

沖縄の皆さんの反応を見ていると、慰霊の日の主役は誰なのか、と考えさせられる。特に、近年の日本政府の沖縄に対する待遇を考えれば、「どうせ沖縄の声を真剣に聴こうとしない首相を招くために、何故ご遺族の慰霊や沖縄の運動が妨げられなければならないのか」と憤りが湧いてくる。

ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会のシール投票の結果

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