私が「沖縄出身者に総理になってほしい」と考える理由

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軍事ビジネスを解禁

 

ところで、1957年生まれの私は戦争を知らない。

 北山修氏と杉田二郎氏が『戦争を知らない子供たち』をリリースしたのが1970年だったから、ちょうど中学に入った頃だった。

 当時の戦争を知らない子供たちも今ではもうみんないい歳だ。安倍晋三総理をはじめ現政権を担っている人たちや、中西宏明経団連会長など経済界の人たちも誰も戦争を知らない。

 「歴史は繰り返す」と言うが、それは人間の寿命と関係している。

 悪しき歴史も悲惨な過去も、それを実際に体験した人たちがこの世からいなくなることによって、貴重な体験が忘れ去られたり薄まったりしてまた同じようなことを繰り返すからだ。人間とは愚かな存在なのである。

 戦後生まれの戦争を知らない世代がマジョリティとなって社会の要職を占めるようになると、「戦争は二度と起こしてはならない」という当たり前のことすらだんだんわからなくなっていく。

 現に、2015年に安保法制を強行採決した現政権は、防衛装備移転三原則などで実質的に軍事ビジネスを解禁した。防衛省が民間企業を引き連れて海外の武器展示会などに出展している光景は、まさに戦前の軍産複合体を彷彿させる。

 防衛副大臣が得意然として銃を構え「今後この分野を日本の産業として支える。どんどん成長して欲しい」と語る姿がネットなどで流れたことがあるが、実におぞましい思いがした。

 ノンフィクション作家の立石泰則氏が『戦争体験と経営者』(岩波新書)という本を出している。

 ダイエーの中内功氏やワコールの塚本幸一氏など、生き地獄のような戦場を体験したからこそ、生き延びて復員してからは徹底して平和主義を貫いた戦後の経済人を数名取り上げ、彼らの平和へのこだわりと迫力ある生き様を簡潔に描いている。

 中内氏は、憲法改正や防衛力強化の必要性を経済界の会合で主張する関西財界の重鎮で当時権力の絶頂にあった住友金属会長の日向方齊氏に対し、時の権力者に臆して沈黙する周囲をよそに、一人面と向かって「異議あり」と激しく反論したそうだ。

 また、ノモンハン事件に従軍し、ラバウルなどの南方戦線にも送られたケーズデンキの創業者加藤馨氏は、2012年に第二次安倍政権が誕生して「憲法改正」を唱えるようになると危機意識を強めた。

 すでに95歳を超えていたが、ある日突然課長以上の全社員を本社会議室に集めるように指示し、自分の戦争体験を話して聞かせ、「みなさん、よく聞いておいてください。戦争は二度と起こしてはいけないものです。あってはいけないものなのです」と述べたという。

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