首里城が燃えていた

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 今日(10月31日)は一日ずっと身体が重たい。いつものように目が覚めてスマホの画面を見ると、悪夢が映っていた。真っ赤な炎をあげ骨組みがはっきりとした首里城。焦げた臭いが伝わる勢いだった。受け止めることのできない出来事に気持ちが追いつかず、硬い布団の中で何度も体勢を変えながら4度寝くらいした。ようやく昼になって布団から脱出し、腹ごしらえをして現場に向かった。

龍潭(りゅうたん)の池に到着した13時40分ごろ、まだ多くの人たちが放水活動の続く首里城を心配そうに眺めていた。呆然と立ちすくむ人々、鼻を赤くし涙をにじませる女性。やっと今朝の出来事が、現実に起きたことなのだと悟った。しかし、いくら目の前に現実が広がっていても、気持ちが全く追いつかない。首里城の周りを歩くことにした。

棒のような足を一本一本動かすと、規制線、警察官、消防車両などが目に入る。首里城公園内には入れないので周りの歩道を歩いていると、パキッパキと乾いた音が鳴っていることに気がついた。足元をみると、炭と化した物体がいくつもあった。今朝の凄まじい映像が再び脳内で再生された。漂う焦げ臭さが鼻腔を強く刺激する。

 高台にある公園に着くとそこにも人が集まっていた。那覇の街を見下ろすと、どんよりした薄暗い空気に包まれていた。
 龍潭の池のほぼ反対側にある高台からも、微かに首里城をみることができた。しかし、そこでは建物の大部分が焼失したことを思い知らされる。消防隊員が懸命に作業をしていた。

 30分ほどあてどなく歩き回った後、沖縄県立芸術大学に向かうことにした。芸大前の道路を進むと、円覚寺(えんかくじ)の近くまで入ることができた。そこから城を見上げると距離が近い分、嫌でも一層よく見える。さらに胸が苦しくなった。綺麗に赤く漆塗られた壁は灰色になり、規律正しく並べられた赤瓦は無惨な姿をしていた。なにも言葉が浮かばない。しばらくボーッと眺めたのち帰路についた。

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