沖縄の多くの人たちの精神的シンボルでもあった首里城。人々は焼けたあとの炭を拾い集めた。まるで魂を拾い集めるように。それはマブイグミ(ショックで離脱した魂を取り戻す儀礼)を彷彿とさせる。
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空気が白くかすむ昼すぎ。那覇市北東部、首里城があった周辺の街を歩いていると、足元でパキパキッと乾いた音が鳴っていることに気がついた。見るとあたりには黒い塊が無数に散らばっている。
10月31日、首里城は炎に包まれた。出火から11時間ほどたち鎮火したときには、正殿、北殿、南殿などが焼失していた。ウチナーンチュ(沖縄の人)たちの心の拠り所が、失われた。
筆者(25)も沖縄に暮らす。あの日の朝、寝ぼけた頭で見た燃え盛るすさまじい絵が頭から離れない。首里の街を歩きながら、おのずと手はその黒い塊に伸びた。炭と化した首里城のかけらを拾い集めたのだ。
誰も予想だにしていなかった首里城の焼失に遭遇し、ウチナーンチュは例えようのない深い悲しみに包まれている。炎の勢いはすさまじく、焼けたあとの炭は那覇市北東部の至るところに落ちていた。