「アベノーマル」から「ニューノーマル」の時代に向けて

この記事の執筆者

コロナ前から続く「緊急事態」

「この国でここ数年続いている異常事態」とは何か? それがもっとも顕著なのは政治の世界だ。実は、コロナによってもたらされた緊急事態のはるか前から、この国では現政権の悪政による緊急事態が続いている。

典型的なのが沖縄へのスタンスだ。

翁長雄志前知事の遺志を継ぎ、辺野古基地建設に反対する玉城デニー知事は、沖縄の歴代知事選で最高得票数となる39万6,632票を獲得した。また、玉城氏は辺野古基地建設の是非を問う県民投票を実施し、知事選を上回る43万4,273票の辺野古基地建設への反対票を得た。それでも政府は辺野古への土砂投入を止めるどころか、再三にわたる玉城氏の申し入れにも関わらず、これらの結果を完全に無視して埋め立て工事を続けている。

そして今回、辺野古基地建設を進めるため国が予定地の軟弱地盤対策に伴う設計変更を沖縄県に申請したのは、沖縄での新型コロナの感染拡大に危機感を抱いた玉城知事が県独自の「緊急事態宣言」を出し、「特定警戒都道府県」に沖縄県を追加指定するよう政府に求めた翌日というタイミングだった。

何度も示された沖縄の民意に反して一貫して冷淡かつ強引な態度を取り続けていることは、現政権の本性そのものであり、沖縄県民だけでなく日本国民全体に向けられたものと受け止めねばならない。

もちろん、現政権の悪政を憂えている人たちはずっと警鐘を鳴らし続けてきた。筆者も例外ではない。野党も粘り強く追及を続けてきたが、官邸によるメディアコントロールの巧みさもあって、国民の関心は常に逸らされ、事態が好転することはなかった。

数限りないスキャンダル

それが、今回のコロナ禍によって状況が一変しつつある。首相と官房長官の確執など、政権内部の分裂も囁かれているが、コロナ禍への一連の危機対応のまずさと、火事場泥棒的ともいわれた検察庁法改定の動きによって、ようやく多くの国民が政治の大切さと現政権の異常さを認識し始めた。

思い返せば、現政権の暴走は、2013年に異例の人事異動で小松一郎氏(故人)を内閣法制局長官に起用して戦争法とも呼ばれた2015年9月の安保法制強行採決に向けた地固めを始めた頃から露骨になった。

その後、この政権下では、森友問題、加計問題、自衛隊の日報隠蔽、統計データ偽装、伊藤詩織さん事件での逮捕揉み消し、PEZY社スパコン助成金詐欺、リニア新幹線汚職、甘利明氏事件、IR(カジノ)汚職、河井克之・案里夫妻事件、サクラ疑惑、業者選定などが不透明なアベノマスク疑惑、黒川弘務氏の定年延長とその後の処罰問題、持続化給付金事務処理の発注企業問題などなど、表に出ているだけでも、とてもすべてを網羅しきれないくらい数限りないスキャンダルが噴出し続けている。

国家の品格を著しく傷つけるようなこれらのスキャンダルは、公文書管理法、公職選挙法、政治資金規正法、あっせん利得処罰法、検察庁法などなど、さまざまな法令違反や脱法の疑義が強く、しかもすべて安倍首相本人や首相夫人または政権中枢の関与が疑われているものである。

しかし、いずれも当事者たちからの説明責任はまったく果たされていないに等しい。河井夫妻事件を除いては検察の動きも鈍く、メディアも及び腰のまま徹底追及していない。

この記事の執筆者