コロナ禍で失った観光の賑わいを取り戻しつつある沖縄県石垣島で、陸上自衛隊ミサイル部隊の駐屯地建設が進んでいる。過熱する米中対立の「最前線」で島の住民たちは今、何を思うのか、そして有事の備えは万全なのか、島を取材した。
(BS-TBS報道1930で12月14日に放送した特集の取材報告です。TBS公式YouTubeで動画配信中 https://www.youtube.com/watch?v=h3Irx9ITsHY )
島の中心部近くで進む自衛隊駐屯地建設
「地元であればあるほど、いろんな関わりやしがらみの中で反対できない」
テレビカメラのインタビューに唯一応じてくれた女性は、言葉を絞り出すように話し始めた。といっても撮影していたのは女性の首から下、顔は出さない条件だった。
人口5万人足らずの沖縄県石垣島で今、陸上自衛隊ミサイル部隊の駐屯地建設が急ピッチで進んでいる。海洋進出を強める中国に対する、いわゆる「南西シフト」と呼ばれるもので、鹿児島県の奄美大島から日本最西端の与那国島まで、これまで基地がなかった島に、わずか5年あまりで自衛隊の部隊が次々と新設されている。石垣島には2022年度内に、敵の巡航ミサイルや艦船に対応するミサイル部隊600人の配備が予定されている。
12月上旬、石垣島の市民が企画し、駐屯地の建設現場が一望できる高台などを巡る視察ツアーが開かれた。この日の気温は25度を超え、八重山特有の汗ばむ陽気の中、約20人が参加した。半数は主催者の仲間たちで、残りの半数は地元紙に掲載された告知を見て集まった人たちだった。
駐屯地の建設工事の様子は、もともとあったバードウォッチングの展望台から丸見えだった。石垣島のほぼ真ん中にある山のふもとを切り開き、視察ツアーが行われた土曜日も、大型のクレーンなどを用いて工事が行われていた。駐屯地の面積は、保守系の石垣市議から購入したゴルフ場などと合わせ、約47ヘクタール、東京ドーム10個分に及ぶ。車で2、3時間もあれば一周できる石垣島。島全体が見渡せる展望台からは、駐屯地が、島の主要な繁華街や集落、空港から決して遠くない場所にあることは明らかだった。