辺野古でのアメリカ軍基地の建設の賛否を問うた沖縄の県民投票は、反対が賛成を大きく上回った。投票日の前夜、那覇市内の居酒屋に友人、知人が集まった。沖縄県庁職員、沖縄の地元紙デスク、東京の大手メディアの記者など。泡盛を酌み交わしながら、県民投票について語り合った。
「投票率は50%超えるだろうか?」
「賛成が反対を上回ることはないだろうが、どのくらい差が開くか?」
議論は、それぞれの立場を踏まえつつ自由に続いた。参加者の中で注目を浴びたのは2人の女性。1人は「news zero」のキャスターを務める有働由美子さん。前にも書いたがNHKの同期だったということで有働と書かせていただく。もう1人は徳森りまさん。31歳の若さで、ボランティアで玉城デニー知事を支える若者の1人だ。
偶然だが、向き合うように座った2人の会話に必然的に皆が聞き耳をたてる。
「りまさんはどうして、玉城知事を支えるようになったの?」
「どうして翁長さんの後は玉城さんってなったの?」
有働の素朴な質問が続く。
「もともと辺野古の建設に反対するおじーやおばーの世話をしていて、私が話しやすいからか、みんなが『りま、これやって』『あれやって』て言っているうちに……」
「私たち、若い人間の間では、翁長さんの後はデニーさんしかないって、それは最初からあった」
りまさんが熱く語る。県民投票が実現したのには多くの若者の行動があったことは知られているが、玉城県政の誕生を後押ししたのも若者の力だったようだ。議論は日付が変わってしばらく続いた。
翌日は投票日。参加者のうち本土から来た数人で辺野古の投票所と普天間の投票所をまわった。プライベートで沖縄に来たという有働は地味な普段着姿で参加。時折、「あの人、有働さんに似ているさねぇ……」という言葉が聞かれた。
杖をついて訪れる年配の女性や18歳の若者が訪れていた。我々の調査でも「反対」が「賛成」を大きく上回った。ただ、「反対」「賛成」ではくくれない思いも感じた。「反対」の中にも、「政府と対立することは良くない」という意見があった。「賛成」の中に、「本当は、基地は造って欲しくないがやむを得ない」という意見も。また、夫がアメリカ軍人だという40代の主婦は、「反対です。新しい基地を造ってはいけない」と語った。
終わった後、それぞれの結果を共有しながら皆で話し合った。なぜ本土で基地問題への関心が高まらないのか?
「やっぱり本土と沖縄には距離があるということなのか?」
「差別じゃないけど、確かに本土は沖縄を区別している気はする」
「でも、北海道から沖縄までの距離の長さが日本の最大の魅力であることも間違いない」
「もし北海道にアメリカ軍が集中していたら? それでも本土は無関心?」
有働が言った。
「やっぱり、りまさんら若い世代かな、新しい日本、新しい本土と沖縄の関係をつくるのは。私たちの世代は区別を真剣に議論しようとするけど、彼女の世代は、そもそも区別を感じていないように思う」
なるほど。りまさんの熱弁を思い出した。では、我々は彼女ら若い力をどうサポートできるのか。それを考えるのは、実にすてきなことだと思う。
【本稿は日刊ゲンダイ連載「ファクトチェック・ニッポン!」(2月27日付)を転載しました】