日米一体化のシンボル
自衛隊の発足以来、防衛官僚の背広組が政治家に代わって制服組を統制する「疑似シビリアン・コントロール」が行われ、定着してきたが、1990年代から始まった海外派遣をきっかけに制服組が少しずつ力を持つようになった。
訓練に明け暮れ、「税金ドロボウ」とまで言われた自衛隊が海外での実任務に就くことにより、日本の国際的地位の向上に寄与しているとの見方が内外で広がったからだ。
決定的だったのは、初の「戦地」派遣となったイラクへの陸上自衛隊派遣だろう。送り込まれた隊員約600人のうち、約100人が業務支援隊に組み込まれ、本来、外務省や防衛省の官僚が担うべき現地政府や地元住民との交渉をほぼ一手に引き受けた。その初代隊長が現在、自民党参院議員の佐藤正久氏である。制服組が権限を強めた象徴といえるのではないだろうか。
2015年6月には防衛省設置法が改正され、背広組と制服組が法律上、対等となり、その3カ月後には安全保障関連法が成立した。
安全保障関連法は集団的自衛権行使の一部解禁ばかり注目されるが、陸上自衛隊が求めた国連平和維持活動(PKO)における「駆け付け警護」「宿営地の共同防護」と海上自衛隊の悲願だった「米軍防護」が盛り込まれた点を見逃してはならない。困難な任務を引き受け、遂行することで制服組がさらに力を強める仕掛けとなっているからだ。
そして、辺野古新基地を共同使用する日米制服組による合意は、この年に成立している。だが、慢心した自衛隊に地元への配慮があろうはずもなかった。
「置きたいですね」。水陸機動団の発足に合わせて「沖縄に部隊を置きたいか」と尋ねた筆者に陸上幕僚監部の将官は率直に沖縄配備の希望を述べた。
「島しょ防衛」を掲げる水陸機動団は3個連隊からなり、2個は九州に置かれたが、残る1個の配備先は未定だった。想定される出動先は南西諸島。候補地は第15旅団があり、後方支援のインフラも整う沖縄本島以外になかった。
2015年4月に日米合意した米軍再編見直しによって、キャンプ・シュワブの第4連隊とキャンプ・ハンセンの第12連隊の国外移転が決定した。一部空き家となる海兵隊基地に陸上自衛隊が入り込む余地が生まれ、そうなれば日米一体化が強化される。
すでにハンセンでは都市型訓練施設を利用した陸上自衛隊の訓練が行われ、日米共同使用が始まった。シュワブはさらに条件がよい。辺野古新基地が完成すれば、陸上自衛隊版オスプレイが配備できて揚陸艦も着けられる。出撃基地として求められる条件が整っている。
陸上自衛隊と米海兵隊は、米本土の共同訓練に加えて、国内のフォレストライト、ノーザンヴァイパーというふたつの共同訓練を通じて連携を深めている。シュワブを共同使用することになれば、日米一体化のシンボルとなるのは間違いない。軍事合理性、経済性からも利点が多い-。
前出の将官が沖縄配備を考えたのは前記のような理由からだ。結局、残る1個連隊は九州に配備されるが、暫定配備なので沖縄への移転は消えていない。