「お言葉」と国民的理解
ここまで屋良朝苗の日誌と回顧録から皇太子夫妻による初沖縄訪問の様子を見てきた。平成の天皇は沖縄の人々にどのように受け止められてきたのだろうか。
NHK世論調査によれば「天皇は尊敬すべき存在である」との回答が、沖縄では平成に入りおおよそ20年間は約30%程度で推移していたが、2012年の調査では51%まで上がった(河野啓「本土復帰後40年間の沖縄県民意識」『NHK放送文化研究所年報』第57号、2013年)。
また、2019年4月末に実施された沖縄タイムスと琉球放送による世論調査では平成の天皇へ「好感が持てる」が87.7%に昇り、「好感が持てない」の1.8%を大きく上回った。平成の天皇が即位からの1ヶ月後1989年2月の調査では「親しみを感じる」が53.0%であったことから、ここからも平成の30年で大きく上昇していることがわかる(『沖縄タイムス』2019年4月30日)。世論調査を見る限り、沖縄県民は天皇の沖縄への積極的な姿勢を評価したと言える。
これは常に沖縄へ寄り添う姿勢を11回の沖縄訪問と節目ごとの「お言葉」にて表し続けてきた結果であろう。そしてその原点のひとつが75年7月の沖縄初訪問であったことは間違いない。しかしその時に皇太子明仁が望んだ「沖縄問題の国民的理解」はどこまで進んだのであろうか。令和の時代においても問われ続けるだろう。