玉城デニー新知事と沖縄県の自治体外交

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1.「3つのD」と自治体外交

 

玉城デニー新知事が誕生した。その要因についての分析はすでに多くなされているので、ここでは玉城新県政の政策、特に外交活動に焦点を当ててみたい。玉城は知事選出馬にあたり表明した政策案「新時代沖縄」の中で「3つのD」を掲げた。ダイバーシティ(多様性)、デモクラシー(民主主義)、そしてディプロマシー(外交)である。

 

玉城デニー9月10日

三つめにディプロマシー。グローバルな政治・経済活動は、歴史的にも沖縄の得意とするところです。世界に広がるウチナーンチュ・ネットワークを活性化させ、ビジネスの輪を広げる。米国あるいは国際社会に直接沖縄が抱える基地問題を訴える。積極的な外交活動が新時代沖縄の切り札です。#新時代沖縄

 

そして県知事就任後に行われた1016日の所信表明では「万国津梁会議(仮称)」を新たに設け、産学官における世界各国との経済、文化、教育、人財などの交流促進、経済発展資源の創出への取り組み、アジア諸国との経済交流に向けたトップセールスやプロモーションの積極的展開などへ意欲を表した。

これらからは玉城知事が沖縄県の国際活動に積極的であることがわかる。一方、外交は国家の専管事項であり、自治体に過ぎない沖縄県が外交的活動を行うことに疑問を感じる読者もいるだろう。しかし地方自治体による国際的な活動が禁じられているわけではない。地方自治体による国際活動は「自治体外交」と呼ばれてきた。

そもそも、日本の自治体外交の端緒は1950年代の姉妹都市提携に求められる。これは文化交流を主とするものであった。1980年代に入ると、冷戦崩壊およびグローバリゼ―ションの進展といった外的要因、旧自治省による国際活動の促進という内的要因を受け、環日本海経済交流や北東アジア自治体連合など、地方間の緊密な連携による地域の発展が目指された。同時期には環境問題などへの自治体による国際協力が盛んになる。2000年代以降は少子化対策および地域社会の活性化を目的として、海外からの企業および観光客の誘致が行われるようになった(大西楠・テア「グローバル化における地方自治体の役割」p.30-31)。今日では外務省も地方による国際的取組を「グローカル外交」と呼び、その支援を行っている。

しかし、自治体による国際活動は文化・経済的分野にとどまらず、政治的分野におよぶこともある。ノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶キャンペーン(ICAN)のパートナー組織でもある平和首長会議はその一例である。また、慰安婦問題に端を発する大阪市のサンフランシスコ市との姉妹都市提携解消も自治体による政治的な国際活動とみなせよう。

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