玉城デニー新知事と沖縄県の自治体外交

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2 政治分野における自治体外交

 

沖縄県の自治体外交については、米軍基地問題について米国さらには国際社会へと訴える政治的活動も行う点にその特色がある。辺野古新基地建設の阻止を要請するため、翁長雄志前知事が訪米したことを覚えている読者も多いであろう。しかし、沖縄県知事による訪米は決して珍しいことではない。1985年に保守の西銘順治が県知事として初めて渡米して以来、国務省や国防総省をはじめとする米国政府機関や、政策決定に影響力を持つ有力議員らへの要請は保守・革新を問わず継続的に行われてきた。米側も国務長官、国防長官が面談に応じることもたびたびであった。近年では県がシンポジウムを主催し、沖縄の基地問題について認識を広めようとしている。

翁長県政による自治体外交の特徴は、米国のみならず国際連合での活動も実施した点にある。2015年9月、翁長前知事はジュネーブで開催された国際連合人権理事会において、民意に反する米軍基地建設は人権無視であるとのスピーチを行った。これまで沖縄県による国外への訴求は当事国である米国のみであったが、国連という国際組織での活動も新たに加わった。これは国際的規範を利用し国際社会からの支持を得ようとする試みであり、沖縄県の自治体外交は新たなフェーズに入ったと位置付けられる。すなわち、国家安全保障の論理によって進められる辺野古への基地建設は、人権・民主主義・平等・環境保護という全人類で共有すべき普遍的価値から認められないと、沖縄県は国際社会に向かって訴えたわけである。

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