4 東アジアの平和実現に向けた自治体外交へ
2010年、沖縄県は「沖縄21世紀ビジョン」を策定した。これは将来(概ね2030年)のあるべき沖縄の姿を描くことを目的としており、県として初めて策定した長期基本構想である。本構想の特徴の一つが、対外活動の方針として「アジア・太平洋「平和協力外交地域」形成」を掲げている点にある。これは「沖縄のソフトパワーを活用した平和協力外交の展開等を沖縄が積極的に担い、アジア・太平洋地域の持続的安定と平和に資する「新たな外交地域」として独自の貢献を果たす」(p.79)と説明されている。
玉城知事が掲げた「ディプロマシー」もまた、この方針に沿うものである。すなわち、政治的分野においては、辺野古への新基地建設阻止と東アジアにおける軍拡競争へ警鐘を鳴らしながら、在沖米軍の整理縮小を訴えていくことになるであろう。その際にはニューヨーク・タイムズ紙が社説にて日米へ沖縄問題への公平な解決策を求めたことを好機として、政府機関のみならず、メディアなどを通して、アメリカ社会そして国際社会へ働きかけることも重要になる。
同時に行われるアジア各国との経済関係強化が、沖縄経済のさらなる成長をもたらせば、米軍基地および財政支出への依存度をより低下させていく効果が期待できる。これは経済面からも米軍基地の必要性を減少させることにつながる。さらに地方政府間協力が深化すれば、東シナ海地域の安定化にもプラスとなろう。
以上から、玉城知事による自治体外交の重視はけっして唐突な提案ではなく、むしろこれまで沖縄県が培ってきた自治体外交の実績を継承、発展させていくものと理解できる。そのうえで、所信表明で言及された「万国津梁会議(仮称)」の設置は自らのカラーを添えるための方策だと考えられる。ここで有能な識者・実務家らを招集し、沖縄の持つ政治・経済・文化それぞれの強みを活かせるような包括的な外交戦略が構成できれば、より効果的な自治体外交が展開されていくであろう。