3 経済分野における自治体外交
玉城知事は政治分野のみならず、経済分野への積極的取り組みも示している。特にアジア諸国との経済交流が強調されているが、これは沖縄だけに限った話ではない。2017年度の知事・政令指定都市市長による海外訪問先は、42ヵ国・地域であり、その内訳は中国が30件と最も多く、次いで韓国25件、フランス21件、米国20件、台湾20件、香港14件となる(鈴木厚「2017年度自治体首長のトップセールス」)。ここ数年の動向としてもアメリカを除けば東アジア諸国・地域が中心である。目的も輸出促進、観光客誘致、航空路・ポートセールスが大きな比重を占めており、地方によるアジア諸国との経済関係強化は全国的に進められている。
沖縄県においては冷戦終結後の1990年代より中国・福建省との交流を進め、大田知事時代の97年に友好県省が締結された(沖縄県「姉妹・友好都市提携」)。以後、歴代県知事もアジア諸国との経済関係強化に努めてきた。その成果の一例が那覇空港への国際線定期便の就航である。1979年から就航していた台北に加えて、ソウル(1992年)、上海(2000年)、香港(2007年)、北京(2011年)、台中(2012年)、釜山(2013年)、福州(2015年)、天津(2015年)、杭州(2015年)、高雄(2015年)、シンガポール(2017年)、西安(2017年)と着実にその数を増やしている(就航都市および就航年は「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」p.79および新聞報道より)。
この背景には政府によるオープンスカイ(航空自由化)協定の締結やLCCの興隆もあるが、県知事のトップセールスによる直行便就航要請も継続して行われていた(例えば、1999年・2000年の稲嶺知事訪中、2009年・10年の仲井眞知事訪中)。沖縄振興の一環として導入された沖縄で1泊することを条件に以後3年間は何度でも日本への入国が可能となる「沖縄数次ビザ」の創設(2011年)もあり、沖縄への外国観光客は2013年の約62万人から2017年には約269万人へと約4.3倍に増えている(沖縄県「平成29年版観光要覧」p.4)。全国的には約1036万人から約2861万人と約2.8倍の増加(JTB総合研究所「インバウンド訪日外国人動向」)であり、沖縄県の増加率は特に顕著である。また、マスターカードの調査の調査によれば、2009年から17年にかけての外国観光客数および消費額の増加率は世界一であった。
沖縄県の経済関係強化は観光客誘致だけではない。例えば、2015年に台湾とは那覇港管理組合と台湾港務のパートナーシップ港として覚書(Memorandum of Understanding:MOU)に署名、那覇港と高雄港の物流サービスの促進やクルーズ船の展開などでの連携強化を打ち出した。2016年には、沖縄県は福建省と「沖縄県商工労働部と福建省商務庁の経済交流促進に係る覚書」を締結した。福建省自由貿易試験区での優遇措置や通関の簡素化により、沖縄と福建をパイプとしての日中輸出入の拡大が図られている。