沖縄の“政治”を生きる若者の歩み

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翁長知事の急逝とデニー知事の誕生

8月8日、翁長雄志沖縄県知事が急逝。保守や革新、無党派を越え「イデオロギーよりアイデンティティー」で沖縄がまとまることの大切さを訴え、構造的差別に立ち向かった偉大な政治家を失い沖縄は深い悲しみに包まれた。

1週間が過ぎ、次の知事選の候補が絞りきれず悶々と過ごすなか、「次の新しい時代の知事は誰がいいか。これからどういう沖縄を創っていきたいか」と10代から30代のメンバー10人以上が集まり夜遅くまで話し合った。そこで挙がったのが、経済界の重鎮である金秀グループの呉屋守将会長と、当時衆議院議員だった玉城デニー氏だった。

急いで2氏を次の知事候補に推薦する文書を作り、調整会議が行われる8月18日の朝、県議会へ行き関係者に手渡した。しかし、その日の夕方のニュースでは2氏の名前は出ず落ち込んでいたところ、翌日のニュースで生前翁長知事が残した後継者に言及したテープが発見。呉屋氏と玉城氏の2氏が指名された。そこから私たちは知事選の青年部で活動するようになる。

2018年沖縄県知事選挙、玉城デニー青年部には学生、受験生、シングルマザー、ミュージシャン、フリーター、会社員などいろんなバックグラウンドを持つ人たちが手伝いに集まった。みんなで、どういう沖縄を創りたいか話し合い、玉城氏のどの政策に共感するか、どういう発信をしたらより広がるか作戦を考えた。そこで生まれたアイデアが、ポジティブ作戦とSNSでの拡散だった。

これまでの選挙で辺野古新基地建設が争点となり、埋め立てに反対する候補は「反対してばかり」とネガティブな印象を持たれていた。そのため、基地問題以外の他の政策がうまく伝わってこなかった。「デニーさんは中高生バス無料化に取り組みます!待機児童ゼロ、保育の質向上につとめます!」などと積極的に政策をアピールした。

 それぞれ違った背景を持つ若者も街頭に立ち自分たちの目線でスピーチをし、これまで政治家の演説を聞いたことがない人でも来やすいよう、青年部でイベントを企画開催した。9月21日に那覇市にあるライブハウス、桜坂セントラルで開催された「Denny Night」ではDJが曲を流しラップをし、玉城氏本人がステージに立ち政策について質問に答えた。

 「この選挙、若いみなさんがとても頑張ってくれた。どうなろうとも大事な瞬間を一緒に分かち合いたい」

9月30日の投開票を見守る会場に、玉城氏自ら青年部用の席を設けてくれた。結果は、知事選過去最多となる39万6632票を獲得し、自民・公明・維新・希望が推薦する佐喜真淳相手候補を8万票の大差で破り当選した。多様な市民が主役となれる、新時代沖縄の幕開けの喜びと希望につつまれた。

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