沖縄の“政治”を生きる若者の歩み

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県民投票までの道のり

10月26日、定例会の最終本会議にて、辺野古の埋め立てについて賛成、反対の2択で問う県民投票条例が賛成多数で可決された。必死に集めた2ヶ月にも及ぶ署名期間、署名してくれた人々の表情が思い浮かんだ。これでやっと、埋め立ての是非について、未来の沖縄はどうあるべきかを話し合えると思っていた。しかし、12月14日辺野古の海に土砂が投入。さらに宮古、宜野湾、沖縄、うるま、石垣の5つの市長が県民投票不参加を表明。2月24日の県民投票実施が危機にさらされた。

 2019年1月中旬、年が明けてもなお事態を打開できずにいた。そんななか、1本の電話が入った。「俺、ハンストをしようと思う。朝日には写真の記録とサポートをお願いしたい。」県民投票の会代表の元山仁士郎からだった。

1月15日「5市長に県民投票への参加を求めるハンガーストライキ」が決行された。現場である宜野湾市役所前には、連日途切れることなく支援者の方々が来てくれた。「まだ若いあなたにここまでさせてごめんね」夜中に涙ぐみながら駆けつけた女性、学校帰りの高校生、車椅子に乗った人。「どうしてこのお兄ちゃんは何も食べないの」ニュースを見て尋ねた、まだ小さな女の子が母親と署名にきた。民主主義の根幹である投票する権利を求め集まった多くの県民の真剣な眼差しや、そこで交わされた言葉は私の心に強く焼き付いて離れない。ハンストは5日目の夕方にドクターストップで幕を閉じた。105時間にも及んだ。

その後、沖縄の公明党県議会議員や県議会議長らが動き、与野党間で調整が行われた。1月24日、全会派による「各派代表者会」が開かれ、賛成、反対に「どちらでもない」が加えられた3択に条例を改正することが合意され、29日の臨時議会で全会一致で条例改正案が可決。5市長も県民投票参加を表明し、全県での県民投票実施が決まった。

 県民投票実施が決まってからは、いかに関心や投票率を高め、議論を深めていくかが課題となった。県民投票の会では沖縄本島以外に離島でも勉強会を開き、無関心層に広げるため県民投票音楽祭や写真展を開催した。県民投票音楽祭は、那覇と石垣島と宮古島で行われ、中高生から団塊世代まで多くの方々がアーティストのメッセージに耳を傾けた。

2月24日、県民投票は無事に投開票され、投票率52.48%、投票総数60万5385票のうち、埋め立て「反対」が有効投票総数43万4273票(72.15%)、「賛成」が11万4933票(19.1%)、「どちらでもない」が5万2682票(8.75%)となった。全市町村で「反対」が多数となり、沖縄県知事選挙で玉城デニー氏の得票数約39万6千票も超える結果となった。

あらゆる構造的差別に目を瞑らない社会

県民投票が行われた2日後の記者会見で、「埋め立て反対」の民意が示されたことを問われた岩屋毅防衛相は「沖縄には沖縄の、国には国の民主主義がある」と答えた。あれから半年以上が過ぎたが、いまだに埋め立て工事は続いている。

 かつて阿波根昌鴻さんら伊江島の住民が、沖縄島を回り伊江島の実情を訴え、土地問題を沖縄全体の問題と喚起したように、今の“沖縄の現状”を日本全体、さらに世界中の人たちに問うことが求められているのではないだろうか。

「あらゆる構造的差別に目を瞑らない社会」は、沖縄の現状にも眼差しが向けられるようになるであろう。家父長制が根強い日本社会では、女性の人権、LGBTQ、貧困問題など、社会的に弱い立場に置かれている人たちが声をあげにくい課題が山積みである。ともに連帯を深め、小さな声を大きな声にすることが沖縄の基地問題を解決に向かわせるだろう。

日本にとって民主主義とは何なのか、人権とは、地域とはどうあるべきか。私たちはいま、一人ひとりの生き方、社会との関わり方について問われているのかもしれない。

【本稿は、わびあいの里機関誌『花は土に咲く』第22号2の寄稿文に写真を追加して掲載しました】

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