新型コロナの緊急事態宣言延長が決まった沖縄県。5月23日から発令された宣言は8月22日まで3カ月続くことになる。
「長いな、と正直思う」
沖縄県の玉城デニー知事は7月8日、緊急事態宣言の延長を受けて、記者団にこう述べた。
県は緊急事態宣言の期限とされた7月12日以降は「まん延防止等重点措置」への移行を国に要請していた。政府がこれをはねつける形で出した結論は6週間の宣言延長。観光業界に衝撃が走った。沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の下地芳郎会長は「延長は避けて欲しかった」と悔しがる。
OCVBは宣言解除を見越し、8月の観光客数が昨年の2・5倍となる約50万人まで回復すると推計していた。「それぐらいは達成しないと、沖縄の観光業界を守れないという思いがありました」(下地会長)
沖縄の観光客数は2019年に初めて1千万人を突破。だが20年は前年比63・2%減の373万人に落ち込んだ。今回の宣言延長は、2年連続で夏休みの需要を失うことを意味する。
全国のなかでも、沖縄のコロナ禍の影響は深刻だ。失業率はコロナ前、0・3ポイント差まで迫った全国平均との差が今年3月時点(原数値)で、全国2・7%、沖縄4・4%と拡大。観光施設などで従業員の大量解雇も始まっている。
観光産業は裾野が広い分、県経済に及ぼすダメージも大きい。沖縄県の民間シンクタンク南西地域産業活性化センター(那覇市)が3月にまとめた推計によると、20年度の県内総生産は物価変動の影響を除いた実質で19年度比9.8%減になる見込みだ。
一方、県民の間には観光業界や観光客に対する不満もくすぶる。
島嶼県である沖縄の感染拡大には一つの特色がある。海を隔てた県外からウイルスを持ち込む「移入例」が感染率上昇の引き金になっているのだ(下図参照)。
また4~5月の大型連休の際、玉城知事が経済界の意向を重視し、酒類提供の自粛要請をしなかったことが今の感染拡大につながった、との指摘もある。那覇市に住む40代の会社員男性は言う。
「レンタカーを見かけると、嫌悪感をあらわにする人も周囲にいます。『観光業界=悪』、『観光客=敵』という見方が県民に広がるのを心配しています」
そんななかで物議を醸しているのが菅義偉首相の言動だ。