著者に聞く~『基地社会・沖縄と「島ぐるみ」の運動』

この記事の執筆者

 

本書からみえてくる現代の「オール沖縄」や「島ぐるみ」の運動

――最後に、この本の執筆を終えられて、改めて現代の「オール沖縄」や「島ぐるみ」の運動はどう捉えられるでしょうか。

秋山:本書で直接対象とした時期は、日本復帰の年(1972年)までなので、現在、研究をさらに進めているところですが、「生活」「生存(生命)」という視点から、現代の情勢や辺野古新基地反対の運動をみていくことが大切だと思っています。

日本復帰後、すでに触れた経済開発などによって、沖縄社会は大きく変容しました。意識調査や経済指標だけみれば、経済開発によって「本土との格差是正」は一定程度進み、日米安保や日本復帰を肯定的に捉える沖縄の人びとも増えてきているとされます。しかしその一方で、日本復帰の目標の一つであった米軍基地の縮小や撤去はたなざらしにされたまま、むしろ時々の日米関係や世界的な軍事秩序に合わせて再編・強化されてさえきました。

そのために、間断なく人びとに突きつけられる軍事基地からの被害、それらは「沖縄戦」や「米国占領」を過去の歴史としてしまうことを許さず、常に現在進行形で捉え返すことを強いています。このように歴史が呼び起こされる際、占領下の沖縄を生きた人びとが、どのような「想い」からB52や米軍基地の存在に拒否を示したのか、そのなかで「生活」「生存(生命)」をめぐっていかなる矛盾や葛藤を抱えていたのか、そこから学ぶことは多いと思います。

最近、直木賞を受賞された真藤順丈さんの『宝島』では、小説という表現手法で沖縄戦後史を生きた人びとの矛盾や葛藤を取り上げていますが、学術書というジャンルで同じようなテーマと格闘した本として読んでもらえれば嬉しいです。

――本書を踏まえた今後の研究も楽しみにしています。

 

【以下、秋山道宏『基地社会・沖縄と「島ぐるみ」の運動:B52撤去運動から県益擁護運動へ』(八朔社、2019年3月)より】

〈目次〉

はじめに

序 章 本書の課題と視座

第1章 1960年代後半の沖縄における基地社会の諸相

第2章 即時復帰反対論の展開と「島ぐるみ」の運動の困難

第3章 B52撤去運動と生活/生存(生命)をめぐる「島ぐるみ」の運動

第4章 B52撤去運動の「島ぐるみ」での広がりと2・4ゼネスト

第5章 尖閣列島の資源開発をめぐる県益擁護運動の模索と限界

終 章 「島ぐるみ」の運動からみえるもの

この記事の執筆者