酔客は誰のために本を買う?
コンビニはないものの、市場と飲み屋がひしめき合う栄町。日が暮れれば酔客があちこちを歩いている。しかし、飲んだ帰りに本を買って帰るのか。朝や昼は、飲み屋が開いていない。24時間、一体、どんな時間帯にどんな人が本を買っていくのだろう。
「夜は、飲んだ帰りのお客さんが多いです。主に男性ですね。家に帰る前に、奥さんや子どもに本や雑誌を手土産に買っていくんです。寝る前に本を読む習慣のある人も買っていってくれます。
でも、一番は、雑誌の入荷日を押さえている地域の常連さんに支えられています。雑誌は船で沖縄に入ってきて、各書店に届きます。大体夜の12時前後。その時間に合わせて店に来てくれる方たちがいます。あとは、船便なのでどうしても発売日から4~5日は遅れます。入荷が遅れていれば、次は何日ごろに入るよと伝えるようにしています」
「真夜中から朝方は、夜勤の父親がゆんたく(沖縄の言葉でおしゃべりの意味)が好きなので、常連さんが父と話しに来ますね。午前5時ごろからは、出勤の早い建設作業員の方たちが現場に行く前に寄っていってくれます」
ちなみに、同組合によると、18歳未満は購入できない成人雑誌の売れ行きは「壊滅的」だという。竹田祐規事務局長は「インターネットの台頭で、アダルト関連も売れない。非常に売れた時期もあり、経営が苦しかった街の本屋が成人雑誌にかじを切った店もあったが、店は続かなかった」と振り返った。
オープンから37年で変わったのは「子ども」
今年で開店37年目、「ブックスおおみね」は、本を通してたくさんの人と出会ってきた。この間、輝浩さんの目から見て、一番変わったのは「子ども」だという。
「昔、街の本屋さんは、子どもたちがお小遣いを持って、遊びながらコミックや文房具を買いに行くところでした。店の中で元気に「おにごっこ」をする子どもたちもいました。でも、今は店の外から、一人で入っていいのかなと様子をうかがって、戸惑う姿を見かけます。子どもだけで買い物に行ってはいけないと学校や親に言われているのかもしれません」
「最近では、本屋は、親が子どもの物を買いにくる場所になりました。子どもに、『お父さん、あの雑誌、昨日本屋に並んでいるはずなのに、何で買ってきてないの』と言われて来たり。文房具もそうです。子どもたちが塾や習い事で忙しいんですかね」
輝浩さんが時代の移り変わりを語っていると、「いま、帰ったよ」とお客さんが入ってきた。
「きょうは『風の谷のナウシカ』の放送があるっていうから、すぐ帰るね。またあした」と言って店を去っていった。
「今のお客さんは、30代くらいだと思いますが、近所に住んでいて、出勤するときは『いってきます』と声をかけてくれます。帰ってきたら『ただいま』と言って、1時間ほど店内をゆっくり堪能していくのが日課です。本当にきょうは珍しい。お客さんとのこういうやりとりに元気をもらっています」
3人でシフトを回し、明かりがともり続ける毎日。24時間営業はいつまで続けるのか。「父は深夜に店で働くと、本当に元気になるんです。朝までおしゃべりをして、生き生きしているように感じます。24時間の強みもあるので、まだまだやっていきたいです」
【本稿は沖縄タイムスのウェブマガジンWコラム記事より転載しました】