R18指定だからこそのリアル~沖縄出身監督が描いた孤独

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何を撮るかを問われ続ける仕事

その黒沢監督に認められ、監督への階段を上ってきた。

「監督って、なりたいと手を挙げてなれるものじゃない。何を撮りたいかがないと監督にはなれない。役職ではなく、具体でしかない。書く仕事もそうですよね。新聞記者になりたいと思っても、何を書きたいかがないと新聞記者にはなれないと思うんです。だから、いつも何を撮るかを問われ続けるのがこの仕事だと思っています」

 映画では、名前を呼ばれたことのない「三井くん」(高良健吾)が、大学時代に唯一名前で呼んでくれた女性「千尋」のことを思い出し、もう一度彼女に触れたいと思うところから映画は始まる。千尋を探し出し、千尋の家の近所に引っ越し、鑑賞魚店を開店し、自宅に侵入するようになる。ただただ千尋を見つめている。

映画「アンダー・ユア・ベッド」で「千尋」を見つめる「三井くん」

「『名前を呼んでもらった』という普通の人間からしたら本当に些細な事が、孤独な三井にとっては、とてつもなく幸せな記憶です。三井は当たり前のように千尋を待つ。たとえ帰ってくるかどうか分からなくても。私が帰ってこない母をずっと待っているのが当然だったように。寂しいとかじゃない」

 しかしながら、千尋は夫から凄惨なDVを受けている。映画での描写も激しく、目を背けたくなる。だからこそ、R18指定なのだが、むしろDVの実態をリアルにあぶり出しているように思う。

「アンダー・ユア・ベッド」で千尋を演じた西川可奈子さん

千尋を演じた西川可奈子さんはこう語る。

 「R18というだけで、この映画を見るという気持ちが勝手に遠のいてしまっているんじゃないかと思うところはあります。R18だとエロいことをイメージされがちですけど、そういうことではなくて、その先の心動くモノを伝えたいと思って演じました。本当にDVを受けて苦しいときは、逃げられないし、何も考えられないんですよ」

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