【対談】長島昭久議員×屋良朝博議員~「辺野古見直し」動くのは今だ

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「新冷戦」時代のリアリズムとは

―尖閣諸島周辺での中国の動きが取りざたされています。

長島 デビッド・バーガー海兵隊総司令官が3月に打ち出した海兵沿岸連隊の沖縄配備方針は、中国の行動が看過できない段階にあることを示しています。在日米軍のシュナイダー司令官も7月末、尖閣諸島周辺の中国公船の監視を米軍が支援するのは可能との見解を示しました。留意すべきは、これだけ尖閣問題が緊張している時期に沖縄の海兵隊を他へ移す議論に踏み込むのは、中国への誤ったメッセージになりかねないということです。

屋良 中国や北朝鮮を隣国に抱え、伝統的な安全保障観で対応していくことも必要ですが、この議論は静かに進めればいい、と思います。自民党の一部から聞こえてくる敵基地攻撃も表立って議論せずとも、自衛隊は既に保有しているアセットを使えば可能と指摘する専門家もいます。それよりも、今日的な安全保障上の脅威とは何かを考えないといけない。9・11のようなテロ、3・11のような災害、そして感染症のパンデミックです。米国では、過去の戦死者をはるかに上回る命が新型コロナによって失われています。こうした問題への対応も安全保障の枠内に入れていく発想の転換を図ることができれば、日本はアジアの中で尊敬される役割を果たせると思います。沖縄の海兵隊はアジア各国で共同訓練を重ね、人道支援や災害救援活動を中心としたソフトパワーや、ソフトとハードをミックスさせたスマートパワーの醸成に努めています。これは自衛隊が世界トップレベルの能力を駆使できる分野です。冷戦時代の日本の古典的な安全保障観を変え、新たな安全保障上の役割に目を向ければ展望や視界はもっと開けるはずです。例えば、日中韓共同でコロナ対策に当たる国際機関の創設も安全保障上の安定醸成装置になります。今の自民党内の議論は、日本をどうやって守るのかに拘泥し、視野が狭いように感じられます。

長島 私も日本はハードパワーよりもソフトパワーに比較優位があると思います。しかし、南シナ海や尖閣、台湾海峡をめぐる中国の強硬姿勢で、米中関係は抜き差しならないものになっています。この米中新冷戦の激化に鑑み、国民の命と平和な暮らしを守るためには最低限の抑止力を米国と共同で確保する必要があります。ソフトやスマートといったきれいごとだけでは通用しない世界になりつつあることも頭に入れ、リアルに沖縄の米軍基地も考えていく必要があります。

屋良 新冷戦と言われる今の状況で、どれだけの部隊であれば抑止力になるのかという回答は誰も持ち合わせていません。リアリズムに徹するのであれば、中国に近い地域に基地が偏在する沖縄の軍事的リスクも加味した上で、日米同盟の責務をどう果たしていくかを議論しないと、米側は安心も納得もしないと思います。

(この対談は7月30日にオンラインで実施しました)

【本稿は『週刊AERA』8月24日号を加筆の上、転載しました】

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