【対談】長島昭久議員×屋良朝博議員~「辺野古見直し」動くのは今だ

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陸上イージスの配備計画中止が可能なら、政府がこだわる「辺野古」はどうなのか。見直しを提言した長島昭久氏(自民)と沖縄選出の屋良朝博氏(国民)の両衆院議員に対談してもらった。

「縮小案」で普天間返還は可能か

―河野太郎防衛相がイージス・アショアの配備計画中止を発表した6月15日、長島さんはSNSで即座に「辺野古見直し」を発信されました。この真意は。

長島昭久 単純に「辺野古はダメ」という話ではありません。いくつか考えなければならない要素があります。私はよく「惑星直列」と表現するのですが、普天間飛行場の移設先に関しては沖縄県外を含めさまざまな案が検討された中で、地元の辺野古地区、名護市、沖縄県そして日米両政府という、すべての関係者が一度は賛成・容認したのは「辺野古」だけです。加えて、私は対中抑止の観点から米海兵隊が沖縄に駐留する意義があると考えています。第一列島線を越えて太平洋進出をはかる中国から見れば、南西諸島はそれを塞ぐ蓋のように作用しています。その中心の沖縄に海兵隊が存在することで中国は行動の自由を阻害される。それがまさしく抑止力です。

一方で沖縄の負担軽減も重要です。日本政府は「一日も早く辺野古の工事を完成させて普天間を閉鎖したい」と言いながら、なお12年かかるという。問題は、軟弱地盤が判明し、約7万1千本もの杭を深い海底に打ちこむ必要がある大浦湾の埋め立てです。とてつもない時間と青天井のコストがかかる作業をこのまま進めていいものか。私の案は、大浦湾の埋め立てを断念し、すでに埋め立てが完了している浅瀬部分を活用して米側に提供する、というものです。現計画の1800㍍の滑走路は500~600㍍に縮小されますが、普天間に配備されているオスプレイの運用は可能です。米大統領選で民主党に政権交代すれば、新政権を支えるのは元米国務次官補のカート・キャンベル氏をはじめ1996年以降、普天間・辺野古の問題にかかわってきた人たちばかりです。今から周到に準備すれば米側との交渉の余地は十分あると思っています。

屋良朝博 これまで政府が「唯一」と固執してきた案に、一石を投じる姿勢には敬意を表します。沖縄が戦略的に重要な位置にあることは誰も疑わないでしょう。ただ、沖縄にいなければ海兵隊は機能しないのか、というと疑問です。必要な施設が整えば、海兵隊はどこでもフィットします。「沖縄でないと仕事ができない」というヤワな部隊ではないのです。問題は日本政府がどこに基地を提供するかです。かりに普天間など海兵隊の基地機能を九州に移転しても、沖縄には極東最大級の米空軍嘉手納基地が残ります。

本来、日米同盟がしっかり機能すれば十分な抑止力になりますが、万全とは言い難いのが現状です。日本政府は沖縄の海兵隊について、佐賀空港での訓練も、約1500人の岩国基地(山口県岩国市)への移転も、地元の反対で断念しました。当時の外相は岩国市まで赴き、「お騒がせしました」と謝罪しました。沖縄からみれば「それはないでしょ」ということの繰り返しなんです。

長島 海兵隊をどう機能させるかという意味では沖縄にこだわる必要はなく、第一列島線上で柔軟に検討できると思います。ただ現段階で、沖縄の海兵隊を移すとなると、中国への誤ったメッセージとなるリスクが高い。中国が今、沖縄に上陸部隊がいることで感じている心理的な圧迫が軽くなり、より自由に動けるという解釈につながる恐れがあります。

―長島さんが提案された大浦湾を埋め立てない「縮小案」で、普天間飛行場は返還の見込みが立つのでしょうか。現計画でも、有事の際は普天間代替施設としての要件を満たさない、との米政府の報告書もあります。

長島 有事を想定した場合、そもそも普天間返還を早期に実現できるかは微妙です。個人的には、辺野古が現行計画通り完成したとしても、そう簡単に普天間は戻るかな、と思っています。(台湾有事など)何かあったときには普天間を使えるようにしておきたいという米側の願望は根強い。普天間の「有事」活用の余地を残しつつ、辺野古の滑走路は1800㍍でなくてもいい、というのが私の考えです。

屋良 有事の際は沖縄で収容しきれない増援部隊が米本国から派遣されます。過去の戦争では海兵隊だけでも9万人規模の兵力が動員され、空軍機も千機を超えます。それをどこで受け入れるかという議論は平時にやっておく必要があります。そもそも受け入れる土壌が日本にあるのか。じつはそれが日米同盟の深化が試される局面です。普天間のオスプレイの訓練分担にすら応じてもらえないようでは、日本は信頼できるパートナーの資質があるのかと米側は疑念を抱くでしょう。国民に負担の必要性を説き、理解を得るのは「保守」を標榜する政治家が本来率先して取り組まなければならない課題です。そうした覚悟や勇気もなく、沖縄の基地偏在を放置するのはNIMBY(Not In My Back Yard)にほかなりません。辺野古にどうやって基地を押し込むかという「スモールパッケージ」で議論するのではなく、憲法9条の枠内で日米関係を新たな局面に対応できる形に発展させていく観点から日本全体で負担の在り方を考えるべきです。でなければ、沖縄は常に喉元に突き刺さったトゲとなり、日米同盟は沖縄の基地問題で揺れ続けますよ。

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