沖縄戦の遺骨を含む土砂を辺野古新基地建設の埋め立てに使う可能性が浮上している。この問題に当事者として向き合う若者のネットワークが立ち上がった。「本土」側で運動を牽引するのはZ世代の若者だ。
沖縄ではここ数年、若者の政治参加が注目を集めてきた。
2019年に実施された辺野古新基地建設の埋め立ての賛否を問う県民投票で、条例制定に必要な署名運動を主導したのは20代の若者たちだ。18年の県知事選でも、玉城デニー知事を支援する20代が中心になって展開したイベントやSNS発信が話題を呼んだ。
ただ、これらの運動の担い手は沖縄の若者に限定されていた。それが今、新たな潮流を迎えている。居住地を問わずシームレスにつながり、沖縄の現状に向き合うネットワークが芽吹いているのだ。
表面化するきっかけを生んだのは、「本土」ではほとんど報じられていない、「南部土砂採取」をめぐる問題だ。経緯を振り返ろう。
辺野古新基地の埋め立て予定地の大浦湾に広大な軟弱地盤が発覚し、大掛かりな地盤改良工事の必要に迫られた防衛省沖縄防衛局が沖縄県に設計変更承認申請を提出したのは昨年4月。この申請書に、埋め立てに使う土砂の調達先として糸満市や八重瀬町などの「南部地区」が新たに加えられていた。
本島南部は今も遺骨が見つかる沖縄戦の激戦地だ。そんな「遺骨混じりの土砂」を基地建設に使うのは「戦没者への冒とくだ」といち早く異議を唱えたのが、那覇市の沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん(67)だ。
今年に入り、採掘業者が糸満市の沖縄戦跡国定公園内の鉱山開発届けを県に提出する事態にまで差し迫り、具志堅さんらは3月1~6日まで沖縄県庁前でハンガーストライキを敢行した。
これに応答したのが、いまは出身地の大阪府茨木市で暮らす米エール大学3年生の西尾慧吾さん(22)だ。
西尾さんは「若者緊急ステートメント(声明)」を発案し、3月6日にウェブ上で発表した。引き金になったのは、ハンストを伝える本土メディアの反応だ。「ああ無視かと」(西尾さん)。テレビは全国枠で報じず、全国紙も小さな扱いだった。
声明は、国や県に本島南部の土砂採掘中止などを求め、日本全体の民主主義にかかわる問題だと訴えた。「当事者意識を持って学び、議論する、開かれた場をつくる」ことを提言。本土のメディアによる報道も呼び掛けた。