後世に恥ずべき行為
環境監視等委員会の食害調査の手法に関しては、大久保氏も疑問を投げかけている。
防衛省は今回、食害を受けたオキナワハマサンゴについて、「PAM」という装置で測定した数値に基づき、食害から回復したと結論付け、サンゴの特別採捕許可の再申請を行った。
この点について大久保氏はこう批判する。
「PAMは褐虫藻の光合成活性を測定する機械で、サンゴの健康状態を把握する指標には使えません。PAMをよく利用する研究者にも確認済みです。沖縄防衛局が提示した資料写真(→本稿の添付写真参照)からもわかるように、食害から回復しつつあるとはいえ、明らかに食害で白くなっている組織と、全く健康な組織で、数値に差が出ていないことからも、この機械で測定した結果がサンゴの健康状態を表していないことを示しています」
サンゴの移植技術は進歩してきたが、長期的な生存率は依然として低く、他の多くの生き物は埋め立てにより死亡するので、移植によるサンゴ礁生態系の保全再生は極めて困難なのが実情だ。大久保氏はこうした現実を踏まえ、サンゴの移植が「環境保全措置」として、サンゴ礁の埋め立て開発の免罪符に使われること自体問題がある、と唱えている。しかし、今回の辺野古新基地建設に当たっては、これまでに培われた移植に関する知見すら、ないがしろにされているのでは、と大久保氏は憤慨する。
「環境監視等委員会が、急ピッチで進む防衛省の基地建設事業にお墨付きを与えるだけの機関になっていないか危惧しています。辺野古の埋め立て予定地と周辺海域に残る貴重なサンゴ礁生態系を破壊し、再生不能な状態に導くことがあれば、科学者として後世に恥ずべき行為と言わざるを得ません」
一連の問題について環境監視等委員会の委員は、個別の取材には応じられない、と回答した。
(本稿は『AERAdot. 』記事
<https://dot.asahi.com/aera/2018051800065.html>を加筆転載しました)