「記者の皆さん、少しお待ち下さい」
石垣市役所で7月18日午後2時から行われた定例記者懇談会の終了直後、中山義隆市長が呼び止めた。ほかに何かあるのかと顔を見合わせていると、会見の場が設定され、「石垣市民の皆さまに対し、ご報告申し上げます」
重大発表は、緊急に意表を突く形で始まったという。
そのころ、市政担当の私は私用で銀行にいた。16日の「海の日」を最終日とする三連休も出勤だったので、17日から2日間の休みをとっていた。用事を済ませたら、小学3年の次男と公園で野球の打撃練習をして、暑いので夕食には冷やし中華でも準備しようかと朝から思い巡らせ、楽しみにしていたところだった。
ところが、午後3時ごろ、記者懇に出席していた同僚から携帯に連絡があった。取り込み中のため、「後でかけ直します」の返信メール。続けて「市長自衛隊配備事実上受け入れ表明」の着信メール。一瞬、目を疑った。どうなっているのか。家族だんらんの予定が一気に吹っ飛び、怒りがこみ上げてきた。
石垣市には地元と沖縄本島の12報道機関で組織する八重山記者クラブがあり、市役所は取材を依頼するとき、加盟各社に一斉配信される記者クラブ連絡をよく利用しているが、今回の会見は事前に連絡がなく、内容についても発表されるまで一切知らされていなかった。記者クラブは会見の翌日、厳重に抗議した。
配備ありき
前置きが長くなってしまったが、中山市長の会見で発表した内容は次の通りであった。
「本日、石垣市は臨時庁議を開催して予てより防衛省から要請のありました石垣島への陸上自衛隊駐屯地配備計画について、南西諸島圏域の防衛体制・防災体制の構築のために石垣島への部隊配備の必要性を理解した上でそれを了解し、今後は石垣市として同計画案への協力体制を構築し、用地取得、施設建設等について国及び防衛省からの要請、申請等が提出された場合、関係法令及び本市の条例等に照らし合わせ適正に行政事務手続きを進めることを確認致しました。以上ご報告します」
陸自配備に向けた協力体制を構築し、手続きを進めるということ。2016年12月26日に「詳細な配置案などを得るため諸手続きを開始することを了承する」と発表した内容と同様、受け入れ表明である。
しかし、記者団から「受け入れ表明ということか」と問われ、「受け入れ表明という言葉は使わず、了解するということ」と説明。「なぜ使いたくないか」と突っ込まれると、「受け入れるということは、受け入れないということもあり得る。配備計画は、国の専権事項なので受け入れないという判断は基本的にない」と発言した。
そう、配備計画が浮上した時点から「国防や安全保障は国の専権事項」との見解を示しているのだから、「受け入れない」という選択肢はない。ある意味、既定路線ではあった。でも、これまでの発言の内容はそうではなかった。