1万4000筆の思いの行方~陸自配備に揺れる石垣島~

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石垣島中央に鎮座する於茂登岳のふもと、石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票条例案は2月1日、石垣市議会(平良秀之議長、22人)で与党の反対多数で否決された。条例制定を求める市民1万4000人余りの思いが葬り去られた格好だ。その翌日、住民投票を求める会の金城龍太郎代表(28)は同会公式ツイッターで報告した。

「署名してくれたみなさん、応援してくれたみなさん、見守ってくれたみなさん、本当にごめんなさい。住民投票をかたちにすることができませんでした。これだけの市民の要求を議会が否決するなんて想定もしていなかったので、僕も今は何も考えきれません」。

何も謝らなくていいのに…。そうさせたのはやはり署名数の多さにある。

石垣市の人口は4万9545人(昨年12月末)で、有権者は3万8799人(同12月1日)。このうち条例制定に賛同した市民は1万4263人(有効署名数)だから、実に有権者の37%を占める。50分の1の法定署名数776人の18倍。

この数は、昨年(18)3月の市長選で中山義隆現市長が獲得した1万3822票より多い。中山市長も認めているように、署名者には支持者も含まれている。だから、かつてない署名数になったのだ。

 

 「着工前に民意を」焦りがあだに

 

条例案は1月21日、市議会総務財政委員会(砥板芳行委員長、8人)で初めて審議された。

金城代表らへの参考人質疑を行った後、委員間での議論に入ったが、住民投票に反対する市民を参考人として招致するかどうかで与野党が対立。「招致すべきだ」「招致すべきではない」と議論は平行線をたどった。

一方で与党からは「選択肢を検討する必要があるのでは」との発言もあったが、野党側が直接請求通り「賛成」「反対」の二択を要求するなど、突っ込んだ議論に発展せず消化不良のまま終了。

第2回は1月30日に予定されていたが、一部野党の意向で急きょ2月1日に変更された。この日は、辺野古米軍基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票の予算案を採決する臨時会の招集日。県議会の与野党合意を受け、市議会でも可決される見通しが立っていた。

野党の一部はこの日で結論を出すよう主張した。「県民投票を認めて住民投票は認めないということはありえない」との期待感と、「着工前に民意を」との焦りがあったからだ。

防衛省は1月31日付で、隊舎や弾薬庫など施設の配置場所となっているジュマールゴルフガーデン13㌶の売買・賃貸借契約を結び、3月1日着工予定の造成工事に向け着々と準備を進めている。このことが背景にあった。ちなみに契約相手は同ガーデンの代表を務める与党の配備推進市議である。

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