ことしの入域観光客数が過去最多の130万人を超える勢いをみせている石垣島。人口4万9000人余の島は観光客の増加で活気づいている。でも、訪れた人は気づいたはずだ。その裏側にある住民同士の対立の気配に。
島のあちこちに立つのぼり旗。商業店舗の宣伝ではない。黄色と、「日の丸」イメージの2種類。海洋性気候の風に年中はためいている。よく見ると、前者は「島のどこにもNO! ミサイル基地はいらない」、後者は「自衛隊配備推進!」と主張している。「イメージが悪くなる」。地元観光業者は顔をしかめるが、これが島の現実だ。
のぼり旗が立ち始めたのは2015年以降のこと。南国特有の強烈な日差しにさらされて色あせ、布がぼろぼろになっているものも目立つようになっている。
秒読み段階
「陸上自衛隊配備候補地選定の現地調査に入る」。
2015年6月、防衛省沖縄防衛局は中山義隆石垣市長に伝達した。調査結果を受け、若宮健嗣防衛副大臣が同年11月、中山市長を市役所に訪ね、島内の市有地と周辺を候補地とする配備計画内容を初めて明らかにし、理解と協力を求めた。警備部隊と地対空・地対艦のミサイル部隊で規模は500-600人程度になる、と説明した。
それから1年後の16年12月、中山市長は「手続きを進めないと詳細が分からない」として配備に向けた諸手続きの開始を了承、事実上の受け入れを表明した。
その後、防衛省は市有地と周辺地権者の意向や地形などを確認する作業に入り、17年5月に「石垣駐屯地」の施設配置案を提示した。面積は46㌶。市有地と民有地は半々で市有地が約23・1㌶。市有地を売り払う場合、市長は議会に提案し、承認を得なければならない。だから、防衛省は市長の同意を必要としている。
計画が具体化してから2年。「遅滞なく整備が進められるよう万全の措置を講じる必要があるとの考えに基づく防衛省独自の判断をした」。防衛省はことし8月末、(中嶋浩一郎沖縄防衛局長)として来年度予算の概算要求で施設整備関連経費約136億円を計上した。「もう待てない」。中山市長に圧力をかける狙いがあったのだろう。
地元配備推進派の突き上げもある。これ以上先延ばしはできない。中山市長は近々、受け入れるかどうかの最終判断を下すが、基本的に拒否する考えはなく、正式な受け入れ表明は秒読み段階に入っている。