「分断と対立」に一筋の光~陸自配備に揺れる石垣島

この記事の執筆者

沖縄県内では、辺野古米軍基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票の全県実施の行方が話題になっているが、石垣島ではもう一つ注目されているものがある。島中央に鎮座する県内最高峰の於茂登岳のふもと、平得大俣地域への陸上自衛隊配備計画への賛否を問う住民投票だ。地方自治法に基づく直接請求に向け、昨年1031日から1130日まで行われた署名運動で、1万4263筆の有効署名が集まった。有権者(3万8799人)の37%。50分の1の法定署名数776人の18倍である。中心となって運動を進めたのは農業青年ら若者たち。これまでの分断と対立という暗い影に、明かりをともしてくれた。

 

愛とユーモアで新しい風

 

話そうよ 話そうよ 今日の出来事 未来の夢/咲かそうよ 咲かそうよ 色とりどりの花 みんなの心に/認めよう 認めよう あなたと違う人 あなた自身も/話そうよ 話そうよ 大切なこと 島のこと

昨年1031日、石垣市住民投票を求める会(金城龍太郎代表)が「愛とユーモア」をスローガンに掲げ、市内の公民館で開催した「市民大署名運動会・開幕式~島に生きる、みんなで考える。大切なこと、だから住民投票~」。おそろいのTシャツを着用した10数人の若者が舞台に登場、会場に呼び掛けるように自作の署名運動テーマソング「話そうよ」を歌った。みんな楽しそう。

中心でギターを弾くのは、求める会代表の金城さん(28)。「島の意見を出すための住民投票。政治は世の中を動かし、未来を決める役割があるが、本当に島を動かすのは皆さんや僕たち市民だ」と宣言し、次のように語りかけた。

「お弁当を開けた時、まっ白いご飯だけ、もしくは同じおかずだけってどう思いますか。いろんな食材がたくさん入っているお弁当のように、島の意見もいろいろあっていいんだと思います。そのいろいろが混じり合い、共存できる魅力ある島を目指したい。そして未来の子どもたちがそのお弁当を開けたとき、わっと喜ぶ顔がみられるような島を、私たちがつくっていきましょう」

いろんな意見があっていい。それを認め合おう。そして最終的に民意を出そう。これが住民投票にかける思いだった。

開始式ではその後もコミカルなコントで署名を求める際の注意点などを紹介する動画、選手宣誓などユーモアあふれる内容が続き、会場はわきあいあいとした雰囲気。堅苦しいイメージのある市民運動とはまるで違う。「若者ならではだな」。新しい風が吹き始めたのを会場にいた誰もが感じとっていた。

この記事の執筆者