「中山市長は、私たち於茂登、開南、川原、嵩田の4地区の住民はおろか、市民全体をあざむくような言動をくり返しているのです」。
石垣島中央部に位置する平得大俣地区への陸上自衛隊配備計画をめぐり、中山義隆石垣市長が7月18日、「理解」「了解」「協力」すると表明したことに対し、配備予定地周辺4地区の公民館長ら住民が8月21日、市民向けに声明を発表した。
なぜ1カ月余りも過ぎたこの時期に、と思われる読者のために説明すると、4地区は農村地帯でこの間、ちょうどパインやマンゴーの収穫繁忙期だったのだ。今回に限らず、彼らは農作業の合間に、あるいは終えて、話し合ったり行動したりしているのである。
声明は、中山市長の「不誠実な行為」として代表例を三つ上げた。
一、「約束を反故にした」
中山市長は2016年12月14日、市議会一般質問で「できるだけ早いうちに4公民館の皆さんと会って話を聞かせてもらいたい。その上で市長としての判断をしたい」と答弁、反対する4地区公民館の意見も聴取する考えを初めて示した。
その後、事務方が4公民館と日程を調整したが、実現せず、中山市長は12日後の26日、「詳細な配置案などを得るため諸手続きを開始すると了承する」と発表した。事実上の受け入れ表明であるが、市長はその後、「受け入れ表明ではない」と否定し続けることになる。
4地区との話し合いについては「お会いしていこうと思っているが、いつお会いできるか分からないので、今日(の発表)が適切と判断した」と説明した。
この経緯に4地区は「話が急だったこともあり、年内での調整は大変難しい状況でした。そこで私たち4地区は市側と、正月以降で日程をすり合わせるべく、話し合いをしてきた。ところがどうでしょう。中山市長はこうしたやりとりを一切無視して突然、陸自配備の事実上の受け入れを表明したのです」と怒りを露わにする。
二、「『ミサイル基地なら反対する』は詭弁」
ことし3月の市長選に際し、中山市長は「ミサイル基地なら反対する」と公言した。「ミサイルとは大陸間弾道ミサイルのことで、石垣島に配備されるのはミサイルとは言わない」との解釈によるもの。陸自配備に反対する陣営が連呼する「ミサイル基地」に反論する形で出た発言だった。
石垣島に配備される装備は地対艦誘導弾と地対空誘導弾。何機配備されるか防衛省は明らかにしていない。
4地区は「『ミサイル基地なら反対する』発言で、安心された市民もいらしたことでしょう。多くの識者がすでに指摘するように、また素人目からしても、本市に配備される武器類はミサイルそのものなのです」と断じる。
どちらが実態に即しているのか。手元にある電子辞書は誘導弾を「ミサイルのこと」(広辞苑)、「ミサイル」(ブリタニカ)と語釈している。
三、「判断とは何だったのか」
陸自配備計画の是非が最大の争点となった市長選で、中山市長は明言を避け、報道機関を通して「市民の意見を聞いた上で、しかるべき時期に総合的に判断を行う」と繰り返してきた。誰もが受け入れ可否の最終判断を行うものとみていた。
しかし、7月18日の会見では「受け入れ」の表現を一切使わず、「受け入れるということは受け入れないということもあり得る。配備計画は国の専権事項なので受け入れないという判断は基本的にない」と説明した。
これにはさすがに4地区も「このような言葉遊びで市民を愚弄するのはやめにしませんか」と半ばあきれ、平得大俣地区にある水源や自然環境に触れながら声明を結んでいる。
「私たち4地区ひいては石垣市民は、中山市長がどう判断するのか注目してきました。しかし、まさかの『判断しない』という無責任きわまりない態度。市長がかねてより述べていた『住民の意見を聞いた上で、しかるべき時期に判断する』という発言は何だったのか。最初から市民を騙していたのではないか」。
「市民の皆さん、今1度ミサイル基地配備のことについて真剣に考えてませんか。配備計画が本当に正しいことであるならば、市長はなぜここまで騙すようなことをするのでしょう。なぜ正々堂々と分かりやすく市民に説明しないのでしょうか」。
「多くの市民の皆さまも、豊かな自然を未来に残したいと思っているはずです。1度汚染された水や大地は容易には元には戻りません。石垣島の子どもたちが、自然の中で遊び、安心して水を飲める。そんな当たり前の日々がこれからも続くことを心から願っています」