「分断と対立」に一筋の光~陸自配備に揺れる石垣島

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伊良皆さんも「周辺4地区の声が届かないし、なんだか4地区限定になっている感じ。島内でもちょっと離れているだけで温度差がある。島全体の問題なのに」と違和感を抱いてきた。

だから、みんなに想像してほしいと願った。配備先が市街地の近くだったら、子どもたちが通う学校の近くだったら、と。

「そうすれば、もっと身近な事として真剣に考えてくれるのではないか。大切なことだから」。

3人は「ハルサーズ」(ハルサーは農家の意)を結成、ライブハウスでミニライブを開いたり、カラフルなアフロヘアのかぶり物で署名を集めたりと、運動を牽引した。

若い女性も加わった。市街地から1時間ほど離れた石垣島最北部の平久保に住む掘井紗らさん(22)もその1人。

一昨年の夏、石垣島で行われた国際ピースキャンプに通訳ボランティアとして参加したが、石垣島での陸自配備問題を知らずに恥ずかしい思いをした。

これがきっかけで昨年8月、韓国政府が住民の反対を押し切って海軍基地を建設したチェジュ島に行き、帰りに辺野古に寄ったが、「チェジュ島では若者たちが活動していた」と年齢層の違いに衝撃を受けていた。しかし、知人の知人に誘われて署名運動開始式に参加したところ、「石垣島でも若い人たちが運動しているんだ」と意を強くした。

金城さんと同級生の石垣舞さんは、育児をしながらチラシづくりや動画編集に協力。「若い人が動くと島が楽しくなり、活気にあふれる。これ以外でも、いろいろおもしろいことができそう」とわくわくするような気持ちになった。

署名運動の閉幕式で発表された署名数に拍手を送る人たち=2018年12月1日夜、石垣市の大浜公民館

 

議会に委ねられた条例案

 

署名運動を振り返って金城さんはこう語る。

「若い人が表に出て動くことができたと思う。なんでそれができたかと考えると、賛成、反対の立場にかかわりなく投票をしようという一点に絞り、力を合わせることができたからだと思う。また、自分たちのやり方をシニアの世代の方が受け入れてくれたのでバランスが良かったのだと思う。自分たちが楽しんでないと、受け取る側も楽しくない。自分たちが楽しまないと長く続かない」。

求める会は昨年1220日、中山義隆市長に直接請求を行った。中山市長は同25日、12月定例会市議会最終本会議に条例案と予算案を提出、両案件は総務財政委員会に付託され、1月中に審議が始まる見通しだ。住民投票が実施できるかどうかは議会の判断に委ねられたことになる。

条例案が可決されれば、金城さんら求める会は、1万4000人余りの思いに応えるため、シンポジウムなどを開催することにしている。これからが本番。島の若い人たちの率先した取り組みを、議会が止めてはいけない。

【石垣島への陸上自衛隊配備計画】防衛省が南西諸島の防衛強化を目的として計画するもの。石垣島では地対艦・地対空誘導弾部隊を含む500ー600人規模。2015年11月に発表された。中山義隆石垣市長は1612月に事実上のゴーサインとなる「諸手続きの開始」を了承、18年7月に「協力体制の構築」を表明した。防衛省沖縄防衛局は19年3月1日の一部用地造成の工事開始を予定している。

 

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