「忘却された歴史」―日本本土の米軍基地問題史を問い直す

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在日米軍の「危険性」

 

安倍晋三政権が、辺野古での土砂投入に踏み切った今日、普天間移設問題は、沖縄県民のみならず、多くの日本国民が注目する重要な政治課題となっている。だが、沖縄米軍基地問題について、国民的な議論は十分に深まっているだろうか。誤解や偏見に基づく議論は、本土と沖縄を「分断」し、問題解決を遠ざけるものでしかない。

普天間移設問題への社会的関心の高まりを背景として、沖縄の米軍基地問題に関する歴史研究は、最近、急速に進んでいる。他方で、日本本土における米軍基地問題史の研究は少なく、社会的には忘却されているに等しい。その「忘却された歴史」を問い直すことは、沖縄の米軍基地問題についての理解を深めるうえでも、不可欠である。

そこで、以下では、本土の米軍基地問題史について概観する。その際には、日米安保体制の構造的特質の一つである、在日米軍の事件・事故で基地周辺住民の生命や財産が危険にさらされ、基本的人権が侵害される「危険性」という視点から論じたい。ほとんど知られていないが、驚くべきことに、一九五二年の安保条約発効から二〇一三年までの間に、一〇〇〇名を超える日本国民が米軍の事件・事故で命を失っているのである(米国統治下の沖縄を除く)。

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