日常生活から見る沖縄の社会変容~コトバ編

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生活の中で見える言語復興の取り組み

 

こうした近年の言語復興の活性化は、人々の生活の中では具体的にどのような形でたち現れているのだろうか?

まず、数年前より県の取り組みに呼応する形でNHKを含むテレビ・ラジオ各局で「しまくとぅば」の学習番組が作成・放送されるようになった。このうちNHK沖縄放送局制作の番組「うちなーであそぼ」は私も見たことがあるが、昔話のアニメから沖縄芝居の名優が登場するドラマ仕立てのコーナーまで多彩な内容で、Eテレ(教育テレビ)の子ども向け学習番組の制作ノウハウを活用した本格的な学習番組となっているという印象を受けた。

 

NHK沖縄「うちなーであそぼ」番組ホームページ

 

一方、教育現場でも「しまくとぅば」を学ぶ機会を増やしてゆこうという流れがあるようだ。沖縄県教育委員会では平成27年度(2015年度)より県内の小学5年生と中学2年生での学習を想定した「しまくとぅば読本」を対象学年に配布している他、各市町村の教育委員会でもそれぞれの地域性に対応した独自教材や講座を作る取り組みが進んでいる。

私の息子たちには、これまでに上述した県教委の「しまくとぅば読本」と那覇市が独自制作した読本「つかってあそぼうしまくとぅば」の二冊が学校で配布された。この二冊の読本を見ると、那覇市の読本は那覇市域の話しコトバと文化に焦点を絞っているのに対し、県の読本は、ユネスコの「危機言語地図」に記載された県内の5言語と各地域の文化を均等に紹介する内容となっているという相違がある。しかし、いずれも子どもたちが関心を持ちやすいようによく考えられて構成されている。

 

沖縄県と那覇市のしまくとぅば読本の表紙

 

沖縄県と那覇市のしまくとぅば読本の内容

 

こうした取り組みによって子どもたちがメディアや学校で「しまくとぅば」に接する機会は数年前より格段に増えている。英語と違って祖父母など生活の中で教えてくれる人も多いのだから、興味を持つ子どもや大人は少なからずいるはずだ。実際、以前、学校の「しまくとぅば」授業をきっかけに沖縄語の学習講座に通うようになった中学生の男の子に出会った事がある。彼のように興味を持った人たちがさらに学べる学習サークル・クラブやイベントも行政の支援で県内各地で活性化しており、「しまくとぅば」に関心を持つきっかけ作りや関心を持った人が学び進めてゆく場づくりは、着実に進んでいるようだ。

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