沖縄県民投票を生かす道は

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賛否を超えた向き合い方

 

まず第1は、問題との向き合い方についてである。この点で注目したいのは、今回の県民投票のプロセスで県民の一部がみせた、とくに若者の一部がみせた、意見の違う相手を排除することなく対話の中で認識を深めていく、という姿勢である。

これは賛成か反対かのみを重視する姿勢ではなく、もっと柔軟で外に開かれたものである。問題を国民的な議論にまで高めるという観点からみた場合、この姿勢は重要ではないだろうか。

よって、この新しい姿勢を尊重・発展させ、賛否を超えたところでの対話を活性化させ、議論のレベルを変えていくことが求められよう。つまり、沖縄の過重な基地負担をどう考えるのか、またこの過重な基地負担を土台に成り立っているこの「国のかたち」をどう考えるのか、といった次元にまで議論を高め、賛成・反対の対立構図を解いていくことが必要であろう。

頼らず、対立せず、無視せず

 

2は、問題の広げ方についてである。この点で示唆的なのは、県民投票の実施に動いた若者たちの行動様式である。1996年の県民投票では連合沖縄を中心にして既存の労働組合や政党などが実施に向けた主導力を発揮したが、今回の県民投票では何よりも若者たちが主導力を発揮し、労働組合や政党などの既存組織を動かしていった。当初これらの既存組織は県民投票の実施に消極的な態度をとっていたが、若者たちの勢いある行動に押されて結局のところ取り組まざるをえなかったのである。

また、5市で県民投票の実施が危ぶまれるなか、「辺野古」県民投票の会の若き代表、元山仁士郎氏のハンガーストライキとそれを支える市民の動きなどをきっかけにして、県民投票に消極的だった公明党県本と自民党県連が実施の方向に動き出し、結局のところ全県実施が実現されたのであった。

こうした若者たちを中心とした草の根の動きは、決して労働組合や政党などの既存組織に頼った動きでもなく、またそれと対立した動きでもなく、かといって無視するような動きでもなく、少なくともこれまでの沖縄にはなかった行動様式である。つまり、既存の大組織に頼らず草の根で支持を広げていき、その広がりのなかで既存組織をも包摂し、同じ方向に動かしていったのである。

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