回路をこじ開けたトランプ大統領
前回の論考(「基地問題を考える回路を取り戻す」https://okiron.net/archives/1393)で私は、「日米安保条約」が「日米同盟」の中核にあるという考えが2000年代に入ったころから徐々に弱くなりはじめ、いわば「日米安保条約」とは切れたかたちで「日米同盟」が語られはじめていることを指摘した。そして、いまや「日米同盟論」の影に隠れた感じのある「日米安保条約」をめぐる議論をもう一度活性化させ、「米軍基地」や「在日米軍」の問題を根底から考えるための回路をつくりだすことが必要である、と論じた。
その論考を発表した数日後、思いもかけぬところからこの回路を開ける人物が現われた。アメリカ合衆国第45代大統領ドナルド・トランプである。6月26日の米FOXビジネスのインタビューでトランプは、「日本が攻撃されれば……我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守る」が、一方の日本は「我々が攻撃されても……我々を助ける必要はない。彼らはソニーのテレビでそれを見るだけだ」と述べ、日米安保条約のもつ最も本質的な問題を取り上げたのである。近年「希望の同盟」とも称される日米同盟だが、その根底には非対称的な性格をもつこの安保条約が横たわっているということを、まざまざと見せつけられる場面であった。
しかし、その後日本政府はこの一連の「トランプ発言」の火消しに躍起となり、また非対称性の問題も国民的な議論にまで高まることはなく、再びその回路が閉じられようとしている。そこで今回は、この日米安保条約のもつ非対称性の問題を、日米地位協定の改定問題と絡めて考えてみたい。