既存のアプローチを超えて
もちろん、それが沖縄で可能となった客観的条件があるのは確かだろうが、この新しい行動のあり方は、問題を国民的な議論にまで高めていく上でも、また高い次元から政権側を同じ方向に動かしていく上でも、重要な示唆を与えてくれるものである。
たとえば、問題を日本全国に広げていくにあたり、これまでは中央(東京)に目を向け、既存の大組織(大手メディア、政党本部、労働組合本部など)に頼っていた面が強かったが、その中央の大組織に依存するのでもなく、対立するのでもなく、また無視するのでもない、新しいあり方を考える上で、今回の若者たちの動きは示唆的である。
また、これとの関連でいえば、「辺野古」県民投票の会副代表を務めた安里長従氏などが提案する「沖縄発 新しい提案」は、それこそ地方自治体レベルから問題を国民的な議論にまで高めていくというアプローチをとっており、興味深い。それに基づき東京の小金井市議会で意見書が可決されたり、また小平市議会でも請願が採択されるなどして、現実には物事が動いている(この提案については、新しい提案実行委員会編『沖縄発 新しい提案』ボーダーインク、2018年を参照)。また、全国各地で草の根の基地引き取り運動が持続的に展開されていることも、重要な動きであろう。
「次元を変える政治」を
いずれにしても、問題を「日本全体の問題」にまで高めていくためには、従来の発想を超えたあらゆる次元からの多種多様な働きかけが必要であり、また「対立」ではなくそれをも「包摂」する新しい思考様式と行動様式が求められよう。
県民投票のプロセスでみられたこの新しいあり方は、安倍政権の「決める政治」「力の政治」とは異なるあり方を示しており、これをさらにバージョンアップさせ、「次元を変える政治」を展開していくことが、今回の県民投票を生かす道ではないだろうか。
*本稿は3月3日付『沖縄タイムス』記事を大幅に加筆・修正しました。