「普天間の危険性放置」の政治責任~SACWO設置に向けて

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「辺野古」は同盟管理の失敗

 

SACWOのような協議機関設置の必要性は、日米間の安全保障政策の専門家も指摘している。その一人が、元米海兵隊政務外交部次長で政治学者のロバート・エルドリッヂ氏だ。

「最大の問題は、日米政府と沖縄県の対話があまりにも足りないことです。長年、『ポストSACO』の議論が必要だと問題提起してきましたが、互いの立場を理解する協議になれば、(SACWO)よい機会になるでしょう」

エルドリッヂ氏は現行の「辺野古」案をこう否定する。

「政治、環境、軍事、財政、戦略の面で問題がある、最悪の計画です」

軍事的な問題の一つは、緊急時の民間空港の滑走路使用だ。

滑走路が1190㍍の辺野古新基地は、2740㍍の滑走路をもつ普天間飛行場の代替施設としては不十分で、米側が緊急時には那覇空港など「民間施設」の使用を求めている。日本政府は武力攻撃事態を想定した「特定公共施設利用法」などを挙げ、緊急時の那覇空港の米軍使用について「特段の問題は生じない」との立場だが、エルドリッヂ氏は機能面の懸念を示す。

「沖縄本島唯一の民間空港は南部の那覇空港ですが、部隊が配備されるのが北部の辺野古となると、アクセスや連携に問題が生じます。那覇空港は航空・海上自衛隊も使用しており、スペースも十分ではありません」

昨年12月に辺野古に土砂投入が始まった際、岩屋毅防衛相は辺野古新基地建設について「日米同盟のためではない。日本国民のためです」と発言した。エルドリッヂ氏は言う。

「『日米同盟のためではない』と言うのは、そもそもSACOの前提を無視した発言ですが、百歩譲って『日本国民のため』というのであれば、『なぜ使えない施設を造るのか』と正直聞きたい。莫大な予算を投じて、使えない施設を造るのは国益上おかしな話です。なぜこんなに粘り強く辺野古にこだわるのか。同盟管理の失敗としか言いようがありません」

 

また、米ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ准教授(日米関係論)は、県民投票結果を受けた『琉球新報』(227日付)のインタビューでこう提言している。

―投票結果は日米両政府に影響を与えるか。

「残念ながら両政府とも代替策を検討しようというイニシアチブを取らないだろう。貿易問題と北朝鮮を巡る日米関係の不確実性を考えると、安倍晋三首相はトランプ米大統領に沖縄の問題を提起することに消極的だ。両政府の防衛、外交担当者はこの問題を再検討することに関心も意思もなく、投票結果は彼らの考えを変えられない」

―県はどう動くべきか。

「県庁の当局者は世論や政治家、ジャーナリストを巻き込み、日米の外交や防衛の専門家と連携し、これまでより積極的、創造的、かつ効果的に動く機会と義務がある。沖縄の状況に共感している人も多い。県は沖縄の声が反映される新たなSACOの開催を主張すべきだ。約23年前のSACO合意以来、安全保障環境と日米同盟の在り方は大きく変わっている」

 

前出の江上氏はモチヅキ准教授に同調し、「政府が動かないのであれば、沖縄県が主体となってSACWOの議論のたたき台となるポイントを整理するため、日米と沖縄の有識者らでつくるワーキンググループを先行して立ち上げるべきだ」と提言する。

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