米海兵隊の戦略と実態のかい離が沖縄にもたらすもの【上】

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沖縄の海兵隊機事故はオバマの負の遺産

米シンクタンクのヘリテージ財団の報告書によれば、海兵隊が、2003年のイラク戦争から使用する、CH53E大型輸送ヘリコプターは、2016年から後継機CH53Kとの交代を開始。2020年までに、交代完了の計画だ。

しかし、実際には、オバマ政権期の予算削減の影響で、CH53Kの導入は遅れている。トランプ政権に入って、軍事予算が増大しても、CH53Eに代わる大型輸送機がそろわない海兵隊は、損傷と老朽化の激しい同機を使い続けている。

CH53Eの37%しかまともに飛ばない状況での運用は、2017年10月、普天間飛行場所属のCH53Eが、東村高江の商業用牧草地に、墜落・炎上する事故につながる。2019年6月にも、児童が部活中の浦添市立浦西中学校のテニスコートに、CH53Eが、プロペラの保護テープを落下させた。運用を続ける限り、CH53Eの事故は、今後も起こる可能性がある。

岩国飛行場に所属する海軍艦載機、F/A18E/F「スーパーホーネット」攻撃戦闘機も同様だ。スーパーホーネットの運用期間は、本来6000時間だが、海兵隊は、1万時間まで延ばして、使い続ける予定である。オバマ政権期に開発が遅らされた、F35B/Cの導入が、進んでいないせいだ。スーパーホーネットは、訓練でたびたび普天間飛行場に飛来しているが、2018年11月、北大東村の沖合で墜落している。

在沖海兵隊の国外移転計画

 オバマ政権が海兵隊に残した置き土産は、ほかにもある。民主党の野田佳彦政権との間で、2012年に合意した、キャンプ・シュワブ(沖縄県)所属の第三海兵師団第四連隊の、グアム移転だ。

ジョージ・ブッシュJr.政権のもとで、2006年に交わされた、在日米軍再編合意では、普天間飛行場の辺野古移設実現を条件に、キャンプ瑞慶覧(沖縄県)の海兵隊文官を中心とする、グアム移転が決定された。

しかし、オバマ政権は2012年、辺野古移設を待たずに、在沖海兵隊の主に戦闘兵力を、グアムに移転させることとする。中国の台頭や北朝鮮の指導者交代によって、グアムの米軍基地強化が急がれたからだ。米議会が、辺野古移設は実現不可能だと、主張したこともある。さらに、中国のミサイル能力が急激に向上し、グアムやハワイも射程に収めるようになったことへの対応で、在沖海兵隊の国外移転先は、複数に分散することになる。

現在、在沖海兵隊の数は2万600人。最新の「在日米軍再編計画(DPRI)」によると、1万1500人に半減させる方針だという。具体的には、在沖海兵隊のうち約1300人が、オーストラリアのダーウィンに移駐。約2700人が、ハワイのオアフとカラエロアに移駐。そして約4100人が、グアムに移駐する計画だ。ハワイには海兵隊員だけではなく、その家族約2700人も移り住む予定なので、計約5400人が移駐することになる。

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