米海兵隊の戦略と実態のかい離が沖縄にもたらすもの【下】

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分散配備に抵抗する海兵隊

海兵隊は、在沖海兵隊の国外への分散移転が、訓練増加や有事対応に支障をきたすと主張している。ロバート・ネラー米海兵隊総司令官は、2019年5月、分散移転計画を見直すべきだという個人的見解を、米上院で述べた。

海兵隊の特性は、水陸両用作戦と機動性。だが、海兵隊が保有する高速の水陸両用艦は、大規模な部隊の移動に向かない。したがって、分散配備後には、水陸両用艦の数を増やすか、戦略を変更するかしないと、訓練や有事に際して動けない、というのがネラーの主張だ。

別の問題もある。在沖海兵隊の移転先の一つ、グアムでは、新たな基地建設と訓練が、環境破壊を引き起こすとして、地元の反対運動が高揚。訴訟もおこされた。そのため、海兵隊基地建設計画は見直され、建設は現時点で、全工程の3分の2しか完了していない。海兵隊のグアム移転は、2024年までに始まり、2028年に完了する予定だが、どうなるだろうか。

在沖海兵隊の広報担当者は、海兵隊を野球チームにたとえる。ピッチャー、バッター、守備が、いつも別々のところで練習し、試合のときだけ集まるのでは、試合には勝てない。チーム全員が、同じ場所で練習するのが大事だ。それが、海兵隊の陸海空一体運用だという。分散移転への反対論だ。

海兵隊の那覇空港使用

在沖海兵隊の国外移転計画が、見直されるかどうか、現段階では分からない。だが、現状では半減する予定の在沖海兵隊に、なぜ、辺野古に建設中の新しい基地が必要なのか。

米海兵隊の「2025戦略構想」では、在沖海兵隊基地である、キャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセン、北部訓練場、伊江島などが、「(訓練場所が)小さく、市街地が(訓練の)妨げとなる」と評価されている。そのため、訓練用の着陸地帯を延長して、オスプレイの訓練状況を改善する必要があるという。

つまり、キャンプ・シュワブのある辺野古沿岸部に、普天間代替施設を建設するのは、海兵隊のオスプレイ訓練のためということになる。1996年の普天間返還合意の翌年、米国防総省が作成した、代替施設の建設計画でも、同じことが書かれている。普天間代替施設は、一貫して、オスプレイの運用・訓練を想定した基地なのである。

ただし、在沖海兵隊からは、オスプレイだけではなく、F35などの運用・訓練にも対応していないと使えないが、普天間代替施設の滑走路は、輸送機やF35の離発着には短すぎるという声が上がる。そこで、海兵隊が要求しているのが、那覇空港の滑走路の使用だ。これは、普天間返還合意の中にも、曖昧ながら含まれている。

沖縄県は、「SACOを着実に実施」する立場をとっているが、那覇空港使用が、普天間合意に含まれていることを、理解しているのだろうか。

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