地上イージス配備で揺れる秋田で「沖縄」が語られる理由

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「ふんだくって」と思ったが…

 「最初は、どんなに反対しても国が決めたら絶対来るだろうと思ったので、だったらお金をいっぱいふんだくっていろんな整備してもらって、秋田市にもっと貢献してもらわないと呼べないよ、ぐらいの勢いでやってもらえばいいと言っていました。

 でも子どもたちの将来とか、レーダー(の人体の影響への不安)のこととか考えると、やっぱりあっちゃいけないのかなと。うちの子も勝平小学校、勝平中学校に入って、(地区内の)秋田商業高校に入る予定なので、断固反対します!」

 14人目の女性が最後だった。陸自新屋演習場へのアショア配備について、佐竹敬久知事は防衛省のずさんな進め方に「秋田が貧乏県だからと馬鹿にされているような気がする」と「白紙」を強調しているが、その言葉への不信感がにじんだ。

 「『白紙』は反対ではない、イコール賛成のような気がして……。横浜の市長もカジノ誘致で選挙の時は『白紙』と言っていて(撤回し)、市民が市役所に押しかけたニュースが流れていました。『白紙』ではなくきちっと言ってほしいし、そのためには地区の人たちが動くことが大事かなと思いました」

 終了の午前11時半が近づいた。「子や孫の代までこの地区を安全に引き継ぎたい」と母親たちに語りかけてきた佐々木さんはほっとした様子で、「いろんな思いがあるようで、素晴らしい話に感謝しています」と話した。すかさず「終わった?」という男の子の声が響く。

 佐々木さんが「さらに皆さんと力を合わせて頑張っていきたい」と締めると、母親たちは拍手をして、日曜の昼ご飯どきの日常へと戻っていった。

禍根を残さないか

 北朝鮮は今世紀に入り核・ミサイル開発を加速させ、最近も日本に届かない短距離とはいえ弾道ミサイルの発射を続けている。政府は国内2カ所にアショアを置く方針で、うち1カ所は「秋田県付近で最もバランスよく防護できる」(岩屋毅防衛相)とし、配備先について5月までの調査では計20カ所(秋田県10、青森県6、山形県4)から陸上自衛隊新屋演習場のみを適当としていた。

 8月28日には防衛省幹部らが秋田県庁と秋田市役所を訪れ、「極めて不適切な対応があったことをおわびする」と述べ、約6カ月半かけて再調査すると説明した。

 ただ、その結果がどこになろうとも、狭い国土に日本で初めて「陸上配備型迎撃ミサイルシステム」を据え付ける行いは、この母親たちが抱えるような地元の不安や悩みを解きほぐさない限り、将来に禍根を残すだろう。

 そう思いながら私も会場を離れ、取材用のレンタカーに戻った。2分でさしかかった市立秋田商業高校のグラウンドでは野球とサッカーの練習をしていた。すぐ先が陸自新屋演習場だ。

 演習場とゴルフ場の間に挟まれた道を抜けると、そこから県庁や市役所までは10分ほどだった。

【本稿はWEB論座(8月30日公開)記事を一部編集の上、転載しました】

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