北朝鮮の弾道ミサイルに備える兵器として政府が導入を急ぐものの、配備候補地とされた秋田市で反対が強まっている「イージス・アショア」。その地に最も近い住宅街で子育て中の母親たちが集まり、意見を交わした。
日本を守るためとはいえ、近所に「陸上配備型迎撃ミサイルシステム」が置かれたら……。暮らしに根ざす不安や悩みが次々と語られ、「沖縄」という言葉も出た。
「居眠り問題」の場で
8月25日の日曜午前9時半、秋田市の新屋勝平地区に住む母親たち十数人が地区のコミュニティーセンターに集まった。配備候補地の陸上自衛隊・新屋演習場から国道7号線を挟んで1キロほどになる。
防衛省が6月上旬に住民への説明会を開いた際、職員の居眠りがばれて紛糾し、配備候補地の再調査につながったあの場所、と言えばおわかりだろうか。建物内には漫画やおもちゃを置く学童保育施設もあり、ご近所の公民館といったたたずまいだ。
広い和室に座布団が並ぶ会場の上座に、年配の男性らが並ぶ。「イージス・アショアの配備計画に関する若い世代の意見を聞く会」を主催した、新屋勝平地区振興会の役員らだ。
振興会は、約1万3千人が暮らすこの地区にある16町内会の連合会にあたる。会長の佐々木政志さん(69)が「理事会で話して、子育て中の親御さんから直接お話を聞く機会を設けることになりました」と切り出した。新屋演習場からの距離を示す同心円を書き込んだ地図が配られており、地元にとって「青天の霹靂」だったアショア問題の経緯を別の役員が説明した。
始まって40分が過ぎた。各町内会への割り当てで出席した母親たちから、意見はなかなか出ない。この日は日曜だったが、父親は仕事で家にいないのか、母親と一緒に来た小学校低学年らぐらいの子が二人いた。男の子はゲーム、女の子はお絵かきをして、時々ごろごろ。
「振興会としては、ここは住宅密集地だからだめなんだと強くアピールしていきたい。ぜひ若い人の声を聞かせていただきたい」と佐々木さんが四度目のお願いをすると、三人が順に小さく手を挙げた。