地上イージス配備で揺れる秋田で「沖縄」が語られる理由

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語り始めた母親たち

 うち二人はアショア配備に反対で、「この地区を離れる人が出るのでは」「この地区以外は秋田市内でも関心がないのでは」といった不安を述べた。ただ、もう一人は家庭での会話を交え、もどかしさを語った。

 「子どもが三人いますが、温度差があって。高校生の子はちょっと世界を見て、もう無理なんじゃないという諦めの言葉を出してました。沖縄(の米軍基地問題)もいくら反対しても結局は国で決まるんだから無理じゃない? どこかが犠牲にならなきゃいけないんでしょ? みたいな」

 「沖縄」という言葉が置かれた文脈に、はっとした。

私は今回、秋田県を訪れアショア配備問題について各地で聞く中で、反対する人たちからよく「国が押しきろうとしてくる。沖縄の人の気持ちがよくわかった」といった声を聞いた。

 だが、この母親が語った高校生の子の反応は、沖縄の現状を見るにつけ国防を担う政府には従わざるを得ない、というものだった。達観、いや諦観と言うべきか……。この母親は続けた。

 「小学生の子はミサイル発射のニュース速報で北朝鮮のことにすごく敏感になって、落ちる? 来る? って。大丈夫だよと言っても保証がなくて。いろいろ親として考えても、先行きがまだ見えないな……という意見です」

 母親たちはまた静かになり、振興会の役員らの発言が続いた。2時間の予定が残り30分ほどになった。佐々木さんは改めて、「秋田市を動かし、市が動けば県が動くという考えで行動しています。地域の皆さんの支えがないと力が小さくなる」と発言を促した。

 しばらく前に最初に発言した女性が、「皆さん手を挙げるのが難しいかもしれないので、マイクを回しては」と提案した。すると、母親たちは次々と語り出した。アショア配備に賛成の声はなかったが、単なる反対にとどまらない、深い思いを多くの人が明かした。

 4人目の女性はこう話した。

 「主人と話していますが、反対の意見ばかり先に出るので、賛成の意見の人を新聞で探しました。そしたら県南の方の市長さんだったか(※秋田市は秋田県央)、こういう世の中なんで、子どもを守るためにそういう基地が全くないのはおかしい、というのを読みました」

 「それではっと気づきました。別に(政権与党の)自民党を推しているわけではないけど、(アショアの)基地があろうがなかろうが、飛んでくるものは飛んでくる。賛成ではないんだけど、あってもおかしくないと実際思いました」

 この新屋勝平地区は戦後に秋田市のベッドタウンとして発展したが、少子高齢化への不安はご多分に漏れない。5人目の女性は「反対ではありますが、アショアがあそこに来ると県外から人がたくさん来て、地域が活性化するという意見を聞いたことがあります」と話した。

交錯していく意見

 様々な意見が交錯していく。6人目の女性は、2年ほど前から地元へのアショア配備の可能性が報道されだしたことと、子どもたちが通う小学校の状況を重ね合わせ、「やっぱり反対」と述べた。

 「6年生と3年生の子どもがいますが、3年生から下が3クラスしかない。4年生から上は4クラス。下の子が入学の時に先生に聞いたら、転校生が来て4クラスになると思うと言ったけど、3クラスのままです。主人と話して、アショアの影響もあるんじゃないかと」

 8人目の女性は平易な言葉ながら、基地問題の本質を突いた。

 「賛成はしないけど、ミサイルが飛んできたときに何もしないのかなとか、反対した時に他の土地がどこにあるのかなとか思ったりするので、無責任かもしれないけど(アショアが)来てしまったらしょうがないかなと思うこともあります」

 「勉強不足だった」「人任せだった」「家族と話していきたい」など、この集まりに感謝する声も目立った。そんな中で、11人目の女性はすでに家庭で話し込んでいるようだった。

 「割と関心を持ってニュースを見ていて、私も子どもたちも反対という気持ちで固まっています。何か協力できることがあればこれからもしていきたいと思いました」

 12人目の女性が基地と振興の問題をあっけらかんと語ると、重苦しかった会場に少し笑いが起きた。

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