血税の垂れ流しが続く

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国が試算した工期は、県が設計変更を認めた時点を起算日に設定している。国は年度内にも県に設計変更を提出する見込みだが、玉城知事は申請を認めない方針だ。国と県との裁判闘争に移る可能性が高いが、この期間は考慮に入れられていない。

かりに国が勝訴したとしても、地盤改良工事に着手するには大浦湾に生息する7万8千群体のサンゴを移植しなければならない。これにも知事の特別採捕許可が必要だが、玉城知事は現在進めている訴訟の進展などを考慮し、移植申請の審査を保留する考えを示している。

しかも、サンゴ移植はダイバーが手作業で実施する。無休で1日に百群体を移植できたとしても、まる2年以上かかる計算だ。しかし国の試算では、こうした期間も考慮されていない。北上田氏は言う。

「普天間返還が遅れるのは、『県が協力的でないため』という面をアピールし、県に責任を押し付けようとする国の意図が見え見えです」

9300億円という総事業費は、新国立競技場の事業費の約6倍だ。しかしこれにも不備がある。辺野古では現在、海上と陸上の警備に国は1日約2000万円を支出している。12年間だと約900億円に上るが、今回の試算に警備費は盛り込まれていない【※】。しかもこれはあくまで民間警備会社に支払う経費だ。警備に当たる海上保安官や警察の機動隊といった公務員の手当ても税金から支出される。国内で前例のない深度の軟弱地盤の技術難度も念頭に入れると、県の試算である2兆5500億円という予算総額が現実味を帯びる。北上田氏はこう指摘する。

「国は後付けで予算増額できると考えているのでしょう。1兆円を切るように設定したのは、膨大な税金の支出に対する国民の批判をかわす意図が感じられます」

「辺野古」の埋め立ての進捗は現段階で全体の1%だ。「辺野古」の失策に国民全体で向き合わなければ、今後も国民の血税が注がれ続けることになる。

【※防衛省の発表資料の細目には明示されていないが、9300億円の中に「警備費」1700億円が含まれていることが、後に判明(2020年1月29日付『琉球新報』、1月30日付『沖縄 タイムス』)】

【本稿は週刊アエラ2020年1月10日号を一部加筆の上、転載しました】

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