コロナ危機の今こそ辺野古移設計画の見直しを

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万国津梁会議の提言

 普天間飛行場の辺野古移設をめぐって、政府と沖縄県は鋭く対立している。今回も沖縄県は設計変更について承認しない見通しであり、またも法廷闘争に突入していくことが予想される。

 しかし、軟弱地盤の存在が明らかになり、政府の説明でも新基地完成まで12年かかる見通しであるという時点で、政府による、「普天間飛行場の早期の危険性除去のための辺野古移設」という大義はすでに揺らいでいる。政府の説明通りに工事が進んでも、普天間飛行場周辺の住民の危険性を12年間放置することになる。また増大した工費も、日本政府、ひいては日本国民にとって大きな財政的負担となる。辺野古移設に政府が固執する結果、政府と沖縄県の対立のみならず、日本本土と沖縄の溝を深めてしまうことは、日本社会全体にとって不幸なことである。

 こうした中、3月27日、筆者もメンバーである玉城知事の諮問会議である「米軍基地問題に関する万国津梁会議」は、「在沖米軍基地の整理・縮小についての提言書」を知事に提出した。提言書は、辺野古移設計画を見直すとともに、沖縄への米軍基地の集中を是正し、さらにアジア太平洋地域のあるべき将来像の中に日本や沖縄の役割を位置づけることを目指したものであった。(本文は、以下のリンクから参照できる。https://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/documents/proposals2.pdf)。

万国津梁会議の提言書

提言書は、「喫緊の課題」、「中期的な課題」、「長期的な課題」という時間軸に沿った三部構成になっており、取り組むべき課題について論点整理をしながら、以下のような提言を行っている。

・喫緊の課題として、普天間飛行場移設のための辺野古新基地建設計画は、軟弱地盤の存在などから「技術的にも財政的にも困難であることが明白になっている」ので、「本来の目的である普天間飛行場の速やかな危険性除去と運用停止を可能にする方策」を日本政府は、米国政府や沖縄県とともに早急に具体化すべきである。

その上で、普天間飛行場の危険性除去と運用停止のため、すでに実施されている同飛行場の海兵隊航空部隊の訓練の県外移転といった方策をさらに進めることを含め、その方策の具体化のために日本政府、米国政府、沖縄県がかかわる専門家会合の設置を提案している。

・中期的な課題として、沖縄米軍基地の抜本的な整理縮小に取り組むべきである。近年、中国の短距離ミサイルや巡航ミサイルといった接近阻止・領域拒否(A2AD)能力の向上によって西太平洋の米軍基地が脆弱になっており、これを受けて海兵隊を含めた米軍も戦略を見直しつつある。こうした戦略環境の変化を踏まえた上で、上記の専門家会合でも検討しながら、沖縄に駐留する海兵隊の日本本土の自衛隊基地やアジア各地への分散移転・ローテーション配備といった方策を進めるべきである。

また、日本本土の地方自治体と米軍基地や日米地位協定についての連携を強化し、これらの問題が日本全体の問題であるという気運を高めていくべきだと沖縄県に求めている。

・長期的な課題として、沖縄米軍基地の一層の縮小を可能にするためには、アジア太平洋地域において緊張緩和と信頼醸成が必要である。そもそも、アジア太平洋地域は、安全保障面では緊張関係にある一方で、経済面では緊密に結びつくという二つの側面を併せもっている。

それゆえ、地域の緊張緩和や信頼醸成を進めるため、地理的・歴史的な特性を活かし、沖縄県はアジア太平洋における地域協力の「ハブ」になるべきである。具体的には、域内対話のための会議の開催やそのための研究機関の設置、自治体外交の推進などを求めている。

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