辺野古新基地「日米共同使用」の歴史的文脈【上】

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はじめに

 1月25日、沖縄タイムスと共同通信は、陸上自衛隊と米海兵隊が、普天間飛行場の代替施設として建設中の辺野古新基地に陸上自衛隊の離島防衛部隊である水陸機動団を常駐させることを2015年に極秘に合意していたと報道した。このスクープは、日本政府が進める辺野古新基地建設への反発が高まっている沖縄県内に大きな衝撃を与えた。26日には玉城デニー沖縄県知事は、「新たな自衛隊配備は県民にとって二重の負担になる」として、辺野古新基地の共同使用は認められないと述べている。

 もっとも、辺野古新基地が将来的には自衛隊が使用するのではないかということは、これまでも沖縄県内では、県庁関係者から専門家やジャーナリスト、そして一般市民の間でもささやかれていた。その背景にあるのは、近年、尖閣諸島をめぐって日中対立が高まる中、沖縄県内で自衛隊が増強されてきたという事実である。与那国島や宮古島に陸上自衛隊が配備され、那覇基地には南西航空方面隊が新たに編成されている。

 このような南西防衛態勢の強化の下で同時に推進されているのが、沖縄の米軍基地の自衛隊との共同使用の推進である。すでに米海兵隊のキャンプ・ハンセンや米空軍の嘉手納基地において、自衛隊との共同使用が行われている。『防衛白書』によれば、沖縄の米軍基地の共同使用は、「沖縄に所在する自衛隊の訓練環境を大きく改善するとともに、共同訓練・演習の実施や自衛隊と米軍間の相互運用性を促進」し、「即応性をより向上させ、災害時における県民の安全の確保に資する」という(『防衛白書』 令和2年度)。

 言うまでもなく、沖縄には、在日米軍専用施設の七割を占める巨大な米軍基地が存在しており、これまでも米軍基地をめぐる問題が注目されてきた。基地の共同使用の問題は沖縄の米軍基地問題と自衛隊の南西防衛態勢の強化が交錯する重要な争点である。本稿では、冷戦後、日米同盟の強化とともに沖縄米軍基地の自衛隊との共同使用がいかに進められてきたのかを概観し、辺野古新基地への陸上自衛隊の常駐計画は、その当然の帰結であったことを明らかにする。

 なお、本論に入る前に基地の共同使用について簡単に説明しておきたい。日米の基地の共同使用には、二つのケースがある。一つは、日米地位協定第2条第4項aの下で、米軍基地を自衛隊が使用するケースである(通称2-4-a)。もう一つは、日米地位協定第2条第4項bの下で、自衛隊の基地を米軍が使用するケースである(通称2-4-b)。前者の場合は米軍が、後者の場合は自衛隊が、それぞれ基地の管理権を持つ。今回報道された辺野古新基地への陸上自衛隊常駐計画においてどちらのケースが想定されているのか明らかではないが、日米の基地の共同使用においてこの点を明確にすることは極めて重要である。

 なお、本稿の内容は、特に断りのない限り、拙稿「冷戦後の日米同盟と沖縄基地の共同使用」(『防衛学研究』第50号、2018年)をもとにしている。

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